権利能力のない社団
2025年11月19日
『国家試験受験のためのよくわかる判例〔第2版〕』 西村和彦著・2024年9月6日
ISBNISBN 978-4-426-13029-9
ガイダンス
社会には様々な団体が存在しますが、このうち、一定の目的を持って組織化された自然人の団体で、構成員とは独立の存在を有するものを社団といいます。社団は、民法その他の法律の規定によらなければ権利義務の帰属主体(法人)となることができません(民法33条1項)。しかし、実際の社会には、社団として扱うにふさわしい実体を有人がらも法人格を取得していないため、権利義務の帰属主体となることのできない団体(権利能力のない社団)が存在しており、このような団体を巡る法律関係をどのように処理すべきかが問題となります。
権利能力のない社団の取引上の債務 (最判昭48.10.9)
■事件の概要
A栄養食品協会は、栄養指導の企業的向上等を目的として活動する権利能力のない社団である。Aの代表者Bは、Aの名でXと取引を行い、これにより、Xは、Aに対し売掛債権を取得したが、Aが不渡手形を出し行方が不明となったことから、Xは、Aの構成員Yに対して上記債権の支払いを求める訴えを提起した。
判例ナビ
第1審、控訴審ともに、Xの請求を棄却したため、Xが上告しました。上告審では、権利能力のない社団の構成員は、社団の定款に構成員も責任を負う旨の定めがある等特段の事情がない限り、代表者が社団の名で行った取引によって生じた債務について責任を負わないかどうかが問題となりました。
■裁判所の判断
権利能力のない社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、その社団の構成員全員に、1個の債務として総有的に帰属するとともに、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的な責任を負わないものと解するのが相当である。
判例
「権利能力のない社団」の資産は、構成員に総有的に帰属する」としています(最判昭39.10.15)。総有とは、1つの物を複数の者が共同で所有する共同所有の一形態で、構成員には持分はなく、目的物の処分や分割を否定されるという特徴があります。本判決は、判例を踏まえ、権利能力のない社団の債務に対する責任財産は社団の総有財産だけであり、構成員は責任を負わないとして、Xの上告を棄却しました。
◆この分野の重要判例
権利能力のない社団の成立要件 (最判昭39.10.15)
権利能力のない社団というためには、団体としての組織をそなえ、そこには多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、しかしてその組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならない。
権利能力のない社団の財産の帰属 (最判昭32.11.14)
権利能力のない社団の財産は、実質的には社団を構成する総社員の所蔵に帰するものであり、総社員の同意があっても、総有財産を特定の社員に分与するようなことはできない。
権利能力のない社団の財産の処分方法 (最判昭47.6.2)
権利能力のない社団の資産である不動産については、社団の代表者が、構成員全員の同意を得て、個人名義で所有権の登記をすることができるにすぎず、社団は代表者とする登記名義の代表者である者の登記を信じた代表者個人名義の登記をすることができる。
権利能力のない社団の原告適格 (最判平28.2.27)
権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有するものである。
◆権利能力のない社団の規約改正の効力 (最判平12.10.20)
Yゴルフクラブは権利能力のない社団であり、本件改正決議は、本件規約において定めている改正手続に従い、総会での多数決により、構成員の資格要件の定めを改正したものである。そうすると、本件改正規定は、特段の事情がない限り、本件改正決議についで承認をしていなかったXを含むYゴルフクラブのすべての構成員に適用される。
解説
本件は、権利能力のない社団であるYゴルフクラブが、規約中の個人正会員の資格要件であるA会社(Yの運営会社)株式の保有数の定めを「2株以上」から「38株以上」に改正し、これに既存の会員にも適用し、資格要件を満たさない会員はその地位を失う旨の決議をしたところ、規約改正後も2株しか保有していないXが、YとYに対し、個人正会員であることの確認を求める訴えを提起したという事案です。本判決は、改正規約の効力はXにも及び、Xは個人正会員の資格を喪失するとしました。
過去問
権利能力のない社団の財産は、社団を構成する総社員の総有に属するものであり、総社員の同意をもって総有の財産その他当該財産の処分に関する定めのなされなくとも、現社員及び元社員は、当該同意に関し、共有の持分権または分割請求権を有する。 (公務員2023年)
権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有しないとした。 (公務員2023年)
社会には様々な団体が存在しますが、このうち、一定の目的を持って組織化された自然人の団体で、構成員とは独立の存在を有するものを社団といいます。社団は、民法その他の法律の規定によらなければ権利義務の帰属主体(法人)となることができません(民法33条1項)。しかし、実際の社会には、社団として扱うにふさわしい実体を有人がらも法人格を取得していないため、権利義務の帰属主体となることのできない団体(権利能力のない社団)が存在しており、このような団体を巡る法律関係をどのように処理すべきかが問題となります。
権利能力のない社団の取引上の債務 (最判昭48.10.9)
■事件の概要
A栄養食品協会は、栄養指導の企業的向上等を目的として活動する権利能力のない社団である。Aの代表者Bは、Aの名でXと取引を行い、これにより、Xは、Aに対し売掛債権を取得したが、Aが不渡手形を出し行方が不明となったことから、Xは、Aの構成員Yに対して上記債権の支払いを求める訴えを提起した。
判例ナビ
第1審、控訴審ともに、Xの請求を棄却したため、Xが上告しました。上告審では、権利能力のない社団の構成員は、社団の定款に構成員も責任を負う旨の定めがある等特段の事情がない限り、代表者が社団の名で行った取引によって生じた債務について責任を負わないかどうかが問題となりました。
■裁判所の判断
権利能力のない社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、その社団の構成員全員に、1個の債務として総有的に帰属するとともに、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的な責任を負わないものと解するのが相当である。
判例
「権利能力のない社団」の資産は、構成員に総有的に帰属する」としています(最判昭39.10.15)。総有とは、1つの物を複数の者が共同で所有する共同所有の一形態で、構成員には持分はなく、目的物の処分や分割を否定されるという特徴があります。本判決は、判例を踏まえ、権利能力のない社団の債務に対する責任財産は社団の総有財産だけであり、構成員は責任を負わないとして、Xの上告を棄却しました。
◆この分野の重要判例
権利能力のない社団の成立要件 (最判昭39.10.15)
権利能力のない社団というためには、団体としての組織をそなえ、そこには多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、しかしてその組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならない。
権利能力のない社団の財産の帰属 (最判昭32.11.14)
権利能力のない社団の財産は、実質的には社団を構成する総社員の所蔵に帰するものであり、総社員の同意があっても、総有財産を特定の社員に分与するようなことはできない。
権利能力のない社団の財産の処分方法 (最判昭47.6.2)
権利能力のない社団の資産である不動産については、社団の代表者が、構成員全員の同意を得て、個人名義で所有権の登記をすることができるにすぎず、社団は代表者とする登記名義の代表者である者の登記を信じた代表者個人名義の登記をすることができる。
権利能力のない社団の原告適格 (最判平28.2.27)
権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有するものである。
◆権利能力のない社団の規約改正の効力 (最判平12.10.20)
Yゴルフクラブは権利能力のない社団であり、本件改正決議は、本件規約において定めている改正手続に従い、総会での多数決により、構成員の資格要件の定めを改正したものである。そうすると、本件改正規定は、特段の事情がない限り、本件改正決議についで承認をしていなかったXを含むYゴルフクラブのすべての構成員に適用される。
解説
本件は、権利能力のない社団であるYゴルフクラブが、規約中の個人正会員の資格要件であるA会社(Yの運営会社)株式の保有数の定めを「2株以上」から「38株以上」に改正し、これに既存の会員にも適用し、資格要件を満たさない会員はその地位を失う旨の決議をしたところ、規約改正後も2株しか保有していないXが、YとYに対し、個人正会員であることの確認を求める訴えを提起したという事案です。本判決は、改正規約の効力はXにも及び、Xは個人正会員の資格を喪失するとしました。
過去問
権利能力のない社団の財産は、社団を構成する総社員の総有に属するものであり、総社員の同意をもって総有の財産その他当該財産の処分に関する定めのなされなくとも、現社員及び元社員は、当該同意に関し、共有の持分権または分割請求権を有する。 (公務員2023年)
権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有しないとした。 (公務員2023年)