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弁護士の知識

公判手続|裁判員の参加する公判手続

2025年11月19日

『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8

2001(平成13)年、司法制度改革審議会意見書は、「刑事訴訟事件の一部を対象に、広く一般の国民が、裁判官と共に、責任を分担しつつ協働し、裁判内容の決定に主体的、実質的に関与することができる新たな制度」(裁判員制度)の導入を提言した。これを受けて 2004(平成16年5月に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(法律63号)が制定・公布され[以下「裁判員法」という],2009(平成21)年5月21日から施行されている。
かつてわが国では、1928(昭和3)年から陪審制度が実施されていたが、約15年で制度が停止されていた。裁判員制度は、約60年ぶりに刑事裁判の中校部分に国民の司法参加を導入するものである。裁判員法は、制度導入の趣旨として、一般国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進と頼の向上に資することを挙げ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法及び刑訴法の特則その他の必要な事項を定めている(裁判員法1条)。なお、裁判員制度の合憲性については、最高裁大法廷の詳細な判断が示されている(最大判平成 23・11・16刑集65巻8号1285頁)。
裁判員制度の導入に伴い。一般国民が裁判に参加しやすいようにするため、刑事裁判の充実・迅速化を目標とした刑訴法と刑訴規則の改正が実現した。また、裁判手続を理解しやすいものとするため、一般国民にとって分かりやすい裁判の実現が期待されていた。
制度施行以降、手統関与者の意識的努力により、特に公判の準備と公判手続の運用に劇的な変化が生じつつあり、両当事者の十分な公判準備と争点整理を踏まえて、人証を中核とした直接主義・口頭主義の審理が集中的・連日的に行われている。それは、現行法制定当初から想定されていた本来の当事者追行主養訴訟の姿を実現するものである。すべての手続関与者の間に、裁判員裁判の刑事公判こそが、本来の刑事裁判の在り方を顕現するものだとの認識が定着してゆくことが望まれる。
以下では、裁判員法の規定のうち、刑事訴訟手続全般と公判手続に密接に関連する部分を説明する。