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弁護士の知識

公判手続き|公判期日の手続|論告・弁論・結審・判決の宣告|弁護人及び被告人の弁論・陳述

2025年11月19日

『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8

論告に引き続き、微告人及び弁護人も、意見を開することができる(法293条2項)。実務では、先に弁護人が練述し、最後に被告人が練述する。前者を弁護人の弁論または最終弁論と称し、後者を被告人の最終陳述と称する。被告人または弁護人の陳述に対して検察官が反論した場合には、その反論に対する意見を述べる機会を被告人側に与える。最終の陳述の機会は被告人側に与えなければならない(規則211条)。
弁論の内容は、論告の内容に対応して、事実に関する主張、法律上の主張、情状に関する主張を被告人・弁護人の立場から行う。公訴事実に争いがない事件では、防側の関心は量刑に集中するのが通例であり、かっては弁論で具体的な量刑意見が述べられることはほとんどなかったものの,裁判員裁判においては、被告人に有利な情状事実を裁判官・裁判員に説得的に示すことが弁護人の弁論の要となる。検察官の情状に関する評価・意見に対応しつつ、前記量
刑検索システムをも意識した量刑評議における争点が明瞭に星示されることが望ましい。
論告及び弁論は、公判廷において口頭で行われるが(口頭主義,法43条1項),複雑な事件や争点の多岐に渉る事件では、陳述の要旨、すなわち論告要旨・弁論要旨を書面に記載して裁判所に提出することも行われている。裁判長は、必要と認めるときは、本質的な権利を害しない限り,論告または弁論に使用する時間を制限することができる(規則 212条)。
なお。2005(平成17)年の規則改正により,検察官,被告人または弁護人が証拠調べの後に意見を陳述するに当たっては、証拠調べ後できる限り速やかに、これを行わなければならない旨が定められた(規則 211条の2)。また,論告・弁論において、争いのある事実については、その意見と証拠との関係を具体的に明示しなければならない(規則 211条の3)。いずれも裁判員裁判をも想定した迅速・的確な評議・判断の道筋を示す趣旨である。
論告・弁論において争点と証拠との関係の具体的明示ができるためには、公判前整理手続段階からの十分な争点整理と、これを踏まえた的確な公判審理が当然の前提となろう。