公判手続き|公判の準備|公判前整理手続|手続の進行
2025年11月19日
『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8
手続は次のように進行し、争点及び証拠の整理と段階的な証拠開示が行われる。
(a)検察官による証明予定事実の明示とその証明に用いる証拠の取調べ請求
十分に争点及び証拠を整理するとともに、被告人側が防葉の準備を整えることができるようにするための前提として、まずは検察官が主張・立証の全体像を明らかにする。検察官は、公判期日において証拠により証明しようとする事実(「証明予定事実」という)を書面で裁判所及び被告人または弁護人に明らかにするとともに(「証明予定事実記載書面」と称する),証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない(法316条の13)。証明子定事実の記載については、事件の争点及び証拠の整理に必要な事項を具体的かつ簡潔に明示し(規則 217条の20第1項),事実とこれを証明するための証拠との関係を具体的に明示する等の適当な方法で,争点と証拠の整理が円滑に行われるよう努めなければならない(規則 217条の21)。無用詳細な記載は有害無益である。
裁判所は、検察官が証明予定事実記載書面を提出すべき期限と証拠調べを請求すべき期限を定めることができ(法316条の13第4項),検察官はその期限を厳守しなければならない(規則 217条の23)。
(b) 検察官請求証拠の開示さらに,検察官は、被告人または弁護人に対し、取調べを請求した「検察官請求証拠」を、次の方法で開示しなければならない(法316条の14)。①証拠書類または証拠物については、これを関覧及び勝写する機会を与えること(被告人の場合は関覧の機会のみ。以下同じ。法316条の14第1項1号)。②証人、鑑定人、通訳人または翻訳人については、その氏及で住居を知る機会を与えるとともに、その者の「供述録取等」(「鉄書、述を録取した書面で供述者の署名着しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であって供述を記録したものをいう」[法290条の3第1項])のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるものを閲覧及び勝写する機会を与えること(法316条の14第1項2号)。②の場合。供述録取書等が存在しないとき、またはこれを関覧させることが相当でないと認めるときは、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面を閲覧及び謄写する機会を与えなければならない。このように、証人予定者の氏名・住居のみならず(法 299条1項参照)。予定供述内容も併せ事前開示される。
* 検察官請求証拠開示の後、被告人側の請求により「検察官が保管する証拠の一覧表」を交付する手続が2016(平成 28)年改正により導入された。その内容は次のとおり。検察官は、法316条の14第1項による請求証拠の開示をした後、被告人または弁護人から請求があったときは、速やかに、被告人または弁護人に対し、「検察官が保管する証拠の一覧表」を交付しなければならない(同条2項)。一覧表の記載事項は、①証拠物の品名及び数量、②供述録取書の書面の標目,作成年月日及び供述者の氏名、③証拠書類(②を除く)の標目、作成年月日及び作成者の氏名とする(同条3項)。ただし、一覧表に記載することにより①人の身体もしくは財産に害を加えまたは人を怖させもしくは困惑させる行為がなされるおそれ、②人の名誉または社会生活の平穏が著しく書されるおそれ、③犯罪の証明または罪の捜査に支障を生ずるおそれがあると認めるものは、記載しないことができる(同条
4項)。
この一覧表交付制度は、被告人側が後記の類型証拠等の開示請求を行うに際し、請求対象を想定・識別するのに資する趣意で導入された。証拠そのものの開示ではなく、検察官が通常保管する証拠について知識経験が乏しい被告人・弁護人であっても開示請求を円滑・的確にできるようにするための配慮である。検察官保管証拠の個別具体的内容を被告人側に伝達するためのものではない。故に、この点についての求釈明(規則 208条)は想定されていない。他方、「証拠書類」について、弁護人が対象を想定・識別するのに資する程度の具体的表示(例.どのような事項に係る「捜査報告書」か推知可能な程度の表記)が望ましいといえよう。
(c)検察官請求証拠の証明力を判断するために重要な一定類型の証拠の開示(a/b)の手続により、検察官の主張・立証の全体像が明らかになるので、これに対し、被告人側が防としていかなる主張・立証をするか決めるのに資するため、数告人個が検察官舗光証拠の証明力を適切に判所できるようにする趣旨で、被告人側は一定類型の証拠の開示を請求することができる。これを、「類型証拠の開示」と称する(法316条の15)。
類型証拠開示の要件は、次のとおり。
①法の定める証拠の類型に該当すること。すなわち、証拠物(法316条の15第1項1号)、裁判所・裁判官による検証調香(同項2号)、捜査機関による検証・実況見分調書またはこれに準ずる書面(同項3号)、鑑定書またはこれに準ずる書面(同項4号)、証人等の供述録取書等(同項5号)。検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しょうとする事実の有無に関する供述を内容とする被告人以外の者の供述取書等(同項6号),被告人の供述録取書等(同項7号)、身体拘束を受けた被告人等の取調べ状況記録書面(同項8号)のいずれかに該当すること。なお、後記のとおり 2016(平成 28)年改正により類型証拠の範囲が拡張されている(*」。
②それが(b)で開示された「特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められる」こと(法 316条の15第1項柱書)。
③②の重要性の程度その他の被告人の防郷の準備のために開示をすることの必要性の程度ならびに開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、開示が相当と認められること(法316条の15第1項柱書)。
④被告人または弁護人から開示の請求があること。被告人または弁護人が開示請求をするときは、証拠の類型及び開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項、ならびに事案の内容、特定の検察官請求証拠に対応する証明予定事実
開示の請求に係る証拠と検察官請求証拠との関係その他の事情に照らし,開示の請求に係る証拠が検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であること
その他の被告人の防の準備のために開示が必要である理由を明らかにしなければならない(法316条の15第3項1号)。
被告人側の開示請求を受けた検察官は、以上の要件を検討して開示が相当と認めるときは、開示をしなければならない。まずは検察官が、証拠の重要性の程度その他被告人側の防禦準備のための必要性の程度と、例えば罪証隠滅、証人成迫。関係者の名誉・プライヴァシイの侵害など開示により生じるおそれのある弊害の内容・程度を勘案して、開示の相当性を判断することになる(法316条の15第1項)。なお、証人等を保護するための規定は、公判前整理手統における証拠開示についても準用される(法316条の23)。また。検察官は、必要と認めるときは、開示の時期・方法を指定し、または条件を付することができる(法316条の15第1項・2項)。例えば、即時または無条件の開示をすると弊害が生じるものの。
これを特定の時期まで開示しないものとすることにより、または一定の条件を付することによって、弊害の発生を防止することができると認められる場合に、開示の時期を指定し、あるいは、一定の条件を付するなどである。開示請求のあった証拠について、検察官がこれを開示しない場合には、その理由を被告人または弁護人に告げなければならない(規則 217条の26)。
*類型証拠開示の規定の趣意は、捜査過程を経て検察官のもとに集積・保管される事件に関する多様な資料のうち,一般的・類型的に被告人側の反証準備にとって重要と認められ、他方。具体的弊害が一般的にきしく、防準備に資するため被告人
側に配分するのが相当と認められるものを第一段階の開示対象として列記したものである。
2016(平成28)年に類型証拠開示の対象を拡大する法改正が行われた。付加されたのは、被告人の共犯として身体拘束されまたは起訴された者であって、検察官が証人尋問請求する予定の者の取調べ状況を記録した書面(法 316条の15第1項8号),検察官請求証拠である証拠物の押収手続記録書面(捜査機関が職務上作成を表務付けられる書面で、証拠物の押収に関し、その押収者、押収年月日、押収場所その他押収の状況を記録したもの)(同条同項9号),類型証拠として開示すべき証拠物の押収手続記録書面(同条2項)である(これについては、開示請求に際して、当該書面を識別するに足りる事項、ならびに開示すべき証拠物と特定の検察官請求証拠との関係その他の事情に照らし、当該証拠物により当該検察官請求証拠の証明力判断のために当該開示が必要である理由を明らかにしなければならない[同条3項2号])。
**捜査機関が自ら知覚した内容を踏まえての考察、意見等を記載した捜査報告書については、知覚・認識された事実の報告部分は類型証拠たる「被告人以外の者の供述録取書等であって、検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」(法316条の15第1項6号)に該当し得る。また、捜査機関が被告人以外の者から聴取した結果を記載した捜査報告書も。捜査機関の「供述書」であり、「述録取書等」の定義(供述書。供述を鉄期した書面で供者の署名若しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であって供述を記録したもの」[法290条の3第1項])に当たる。
類型証拠開示の目的は、「事実の有無に関する供述」の存在とその供述内容を被告人鯛に伝達して防界準備に資することにあり、犯罪事実認定に係る証拠法則である伝開法則とは無関係である。故に、このような捜査報告書に記載された被告人以外の者の供述は、伝開法則の観点からは証拠能力の認められないものであっても。前記6号には該当し開示の対象となり得ると解すべきである。これに対し、6号の「供述」には伝開は含まれないとする裁判例がある(東京高決平成18・10・16判時1945号166頁、大阪高決平成 18・10・6判時1945号166頁)。
***実務上、手続の早い時点(前記。証明予定事実記載書面の提示と検察官請求証拠の取調べ請求の前後の段階)において、検察官が請求証拠以外の類型証拠や後記の主張関連証拠に該当するであろうと思われる証拠を開示して、被告人側の防禦準備を促進させる運用がしばしば行われている(「任意開示」と称される)。任意開示の対象となる典型的な類型証拠としては、請求証拠以外の実況見分調書(法316条15第1項3号),重要証人の供述録取書等(同項5号),被告人の供述録取書等(同項7号)などがあり、事案により被告人等に係る取調べ状況記録書面(同項8号)などが想定される。弁護人は、このような任意開示された証拠及び検察官保管証拠の一覧表(法316条の14第2項・3項)の検討をも踏まえて、さらに類型証拠等の開示請求の要否を検討することになる。公判前整理手続全体の迅速化に資する適切な運用といえよう。
(a) 被告人側の主張の明示と証拠調べ請求等このようにして被告人側には、あらかじめ検察官の主張・立証の全体像が具体的に示されるのみならず。
検察官請求証拠の証明力を判断するために重要な一定類型の証拠の開示を受けることができる。そこで法は、これらの手続終了後であれば、被告人側に、あらかじめ公判でする予定の主張等を明らかにするよう求めても、防の利益を損なうものではないことから,被告人側に一定の応答を義務付けている。検察官による証明予定事実の明示,その証明に用いる証拠の取調べ請求及びその開示、検察官請求証拠の証明力を判断するために重要な一定類型の証拠の開示が行われた後、被告人または弁護人は、次の応答をしなければならない。
①検察官請求証拠について、法326条の同意をするかどうかなどの証拠意見を明らかにすること(法 316条の16第1項)。
②証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及
ご注律上の主張があるときは、裁判所及び検察官に対し、これを明らかにすること(法316条の17第1項、規則217条の20第2項・217条の21)。「事実上の主張」とは、裁判所による認定を要する事実に関する被告人側の主張であり、積極的な事実主張のほか、検察官が明示した個別の証明予定事実に対する否認の主張も含まれる。「法律上の主張」とは、法令に関する主張であり、刑覇法令の解釈,合憲性、法令の適用等に関する主張をいう。
③被告人側に証明予定事実があるときは、その証明に用いる証拠の取調べを請求すること(法316条の17第2項)。
④被告人側の請求証拠を検察官側に開示すること(法 316条の18)。被告人側請求証拠の開示の方法は、検察官請求証拠の場合と同じである。検察官は、被告人側請求証拠の開示を受けたときは、これに対する証拠意見を明らかにしなければならない(法316条の19)。
裁判所は、被告人側の主張明示や証拠調べ請求の期限を定めることができる(注316条の17第3項)。また、当事者双方に対し、相手方に対する証拠意見を明らかにすべき期限を定めることができ(法316条の16第2項・316条の19第2項),訴訟関係人は期限を守らなければならない(規則217条の23)。もっとも裁判所は、期限までに意見や主張が明らかにされず,または証拠調べ請求がない場合でも、公判の審理を開始するのを相当と認めるときは、公判前整理手続を終了することができる(規則 217条の24)。
なお。最高裁判所は、法が被告人に対し主張明示義務及び証拠調べ請求義務を定めていることについて、「被告人又は弁護人において、公判期日においてする予定の主張がある場合に限り、公判期日に先立って、その主張を公判前整理手続で明らかにするとともに、証拠の取調べを請求するよう義務付けるものであって,被告人に対し自己が刑事上の責任を問われるおそれのある事項について認めるように義務付けるものではなく、また、公判期日において主張をするかどうかも被告人の判断に委ねられている」ことから、自己負罪拒否特権(憲法 38条1項)に違反しないと判断している(最決平成25・3・18刑集67巻3号
325頁)〔第1編捜査手続第9章II.3(1]。
*最高裁判所は主張明示義務と公判期日における被告人質問の制限の可否との関係について、のように説示して、公判期日での新たな主張が制限される場合があり得る旨指摘している(最決平成 27・5・25刑集69巻4号636頁)。
「公判前塾理手続は、充実した公判の審理を継続的。計画的かつ迅速に行うため、事件の争点及び証拠を整理する手続であり、訴訟関係人は、その実施に関して協力する義務を負う上、被告人又は弁護人は、刑訴法316条の17第1項所定の主張明示義務を負うのであるから、公判期日においてすることを予定している主張があるにもかかわらず、これを明示しないということは許されない。・・・・・・公判前整理手続終了後の新たな主張を制限する規定はなく、公判期日で新たな主張に沿った被告人の供述を当然に制限できるとは解し得ないものの、公判前警理手統における被告人又は弁護人の予定主張の明示状況(裁判所の求釈明に対する釈明の状況を含む。)、新たな主張がされるに至った経緯、新たな主張の内容等の諸般の事情を総合的に考慮し、前記主張明示義務に遊反したものと認められ、かつ、公判前整理手続で明示されなかった主張に関して被告人の供述を求める行為(質問)やこれに応じた被告人の供述を許すことが、公判前整理手続を行った意味を失わせるものと認められる場合(例えば、公判前整理手続において、裁判所の求釈明にもかかわらず、「アリバイの主張をする予定である。具体的内容は被告人質問において明らかにする。」という限度でしか主張を明示しなかったような場合)には、新たな主張に係る事項の重要性等も踏まえた上で、公判期日でその具体的内容に関する質問や被告人の供述が、刑訴法 295条1項により制限されることがあり得るというべきである。」(e) 被告人側の主張に関連する証拠の開示さらに法は、(d)で示される被告人側の主張に関連する証拠の開示について定める。これは、被告人側が具体的に明らかにした主張によって生じた争点に関連する証拠を開示することにより、さらなる争点整理や被告人側の防準備を可能にする趣旨である。「主張関連証拠の開示」と称される。主張関連証拠開示の要件は次のとおり(法 316条の20)。
①被告人または弁護人が明らかにした事実上及び法律上の主張に関連すると認められる証拠であること。主張との関連性は抽象的なものでは足りない。
②その関連性の程度その他の被告人の防の準備のために該開示をすることの必要性の程度と開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、開示が相当と認められること。
③被告人または弁護人から開示の請求があること。
開示は、他の場合同様、閲覧・謄写の機会を与える方法による。検察官が、必要と認めるときは、開示の時期・方法を指定し、または条件を付することができる点も同様である。
*最高裁判所は、捜査機関が取調べ等捜査の過程で作成したメモについて、それが当該事件の捜査の過程で作成され、公務員が職務上現に保管し、かつ、検察官において入手が容易なものは、被告人側主張との関連性・必要性が認められる場合、証拠開示命令の対象になり得るとの判断を示している。(最決平成19・12・25刑集61巻9号895頁,最決平成20・6・25集62巻6号1886頁、最決平成20・9・30刑集62巻8号 2753頁)。
被告人側の具体的主張と反証準備に資する素材の発見・伝達を通じて一層の争点理を進めるという法目的から、開示対象の範囲が、1現に検察官の手中に在るかを問わず、贅察官等が保管し、入手・伝達が容易であるものにも及ぶこと、2)事業の背景事情によっては当該被告事件の捜査と密接に関連する他事件の捜査過程で作成された取調べメモ等も対象となる場合はあり得よう。
もっとも、それらの内容は争点の「事実」に係る記載であることが前提であり、捜査・訴追側の事実の評価。法的見解、捜査方針等に係る意見(ワークプロダクト)は開示対象にはならないというべきである。
(f) 証拠開示に関する裁定
以上のような証拠開示の要否の判断をめぐっ
て、検察官と被告人側との間で争いが生じた場合には、公判前整理手続を主宰する裁判所がこれを裁定する次のような制度・手続が設けられている。
①開示時期の指定等。前記のとおり,検察官,被告人・弁護人は、取調べ請求する証拠を開示しなければならないが、裁判所は、開示すべき事者の請求により、開示の必要性の程度ならびに弊害の内容及び程度等を考慮し、必要と認めるときは、決定で、開示の時期・方法を指定し、または条件を付することができる(法 316条の25)。
②開示命令。裁判所は、法の規定により当事者が開示すべき証拠を開示していないと認めるときは、相手方の請求により,決定で、当該証拠の開示を命じなければならない。その際、開示の時期・方法を指定し、または条件を付することもできる(法316条の26)。なお、前記のとおり、検察官は、証拠開示に際して開示の時期・方法を指定したり条件を付することができるが、これに対して被告人側は、検察官が付した条件等に不服があれば、開示命令の請求をすることができ、裁判所は、その条件等が不当であると判断した場合、無条件の開示や新たな条件等のもとでの開示を命ずることもできる。
以上のような裁定のための裁判所の決定に対しては、即時抗告をすることができる(法316条の26 第3項)。
裁判所は、裁定をするため必要と認めるときは、請求に係る証拠の提示を命ずることができる。また、裁判所は、被告人側から開示命令の請求があった場合に、検察官に対し。その保管証拠のうち裁判所の指定する範囲に属するものの標日を記載した一覧表の提示を命ずることもできる。ただし、この証拠の提示命令や一覧表の提示命令は、裁判所が裁定を的確に行うことができるようにする趣意であるから、提示された証拠及び一覧表は、何人にも閲覧または勝写をさせることができない(法316条の27)。
*即時抗告の提起期間は3日であり(法422条)。原決定が告知された日から進行する(法 358条)。初日を算入しないので、期間の起算日は決定告知の翌日である(法55条1項)。従前、原決定謄本が被告人と弁護人の双方に日を異にして送達された場合の抗告提起期間は、被告人に送達された日から進行するという判例があったが(例、上告棄却決定に対する異議申立てについて、最決昭和32・5・29刑集11巻5号1576頁、保釈請求却下決定に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告について、最決昭和43・6・19刑集 22巻6号 483頁),最高裁判所は、証拠開示命令請求棄却決定に対する即時抗告の提起期間について、弁護人に同決定謄本が送達された日から進行するとした(最決平成23・8・31 刑集65巻5号935頁)。裁定請求の主体は弁護人であり、弁護人が、被告人ではなく弁護人自身に対して証拠を開示することを命じる旨求めているという請求の形式等がその理由とされている。
** 証拠開示制度は、法の欠落を埋め、事件の争点整理を促進させる公判前整理手続の目的に関連付けて設計・導入されたものである。これに対して、公判前整理手続に付されない事件については、従前の事前準備に関する規律と、公判審理に入ってから裁判所の訴訟指揮権に基づく証拠開示命令の途を認めた最高裁判例が存するところであるが(判例は、裁判所は、証拠調べの段階に入った後、弁護人から具体的必要性を示して一定の証拠閲覧の申出があれば、その訴訟指揮権にもとづき、事案の性質,審理の状況、閲覧を求める証拠の種類及び内容、閲覧の時期、程度及び方法などを考慮し、それが被告人の防興のためにとくに重要であり、かつこれによって罪証隠滅,証人威迫などのおそれがなく、相当と認めるときは、検察官に対し、その所持する証拠を弁護人に閲覧させるよう命ずることができるとする[最決昭和 44・4・25刑集23巻4号248頁]),第1回公判期日前ないし審理中に証拠開示をめぐる当事者間の争いが顕在化した場合には、公判審理の継続性・迅速性が阻害されるおそれがあるので、裁判所は事件を公判前整理手続(法316条の2)または期日間整理手続(法 316条の28)に付する決定を行い、完備された証拠開示制度を利用できるようにするのが適切であろう。なお、実務では、整理手続に付さない場合でも、規則178条の6第1項1号の規定に係わらず、当事者間で類型証拠開示や主張関連証拠開示に準じた任意の証拠開示が行われる例もあり、これが、争点整理や被告人側の防票準備を促す役割を果たしている。
***検察官による証拠開示は、現に係属する被告事件について、十分な争点整理と被告人側の防準備に資することを目的とする。開示証拠の複製等が第三者に交付されるなどすれば、罪証隠減、証人成道、関係者の名誉・プライヴァシイの侵害等の弊害が拡大するおそれがある。また。開示証拠の目的外使用が無制約に行われると。検察官及び裁判所は証拠開示の要否の判断において、目的外使用による弊害の可能性をも考慮しなければならず、かえって、開示の範囲が狭くなるおそれがある。そこで、法は、開示証拠が本来の目的にのみ使用されることを担保し、開示がされやすい環境を整え、ひいては証拠開示制度の適正な運用を確保する趣旨で、被告人または弁護人等による開示証拠の目的外使用を禁止する旨を明記している。被告人、弁護人またはこれらであった者は、検察官から被告事件の審理の準備のために開示された証拠に係る複製等を、当該事件の審理など被告事件に係る裁判のための審理のほか法所定の手続またはその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、提示し、または電気通信回線を通じて提供してはならない(法281条の4)。目的外使用には刑事罰も設けられており(法 281条の5)、また目的外使用の禁止と併せ、弁護人は開示証拠の複製等を適正に管理し、その保管をみだりに他人にゆだねてはならない旨定めがある(法281条の3)。不適正管理が弁護士倫理に反し懲戒に価するのはもとよりである。
(g) 当事者双方による主張・証拠請求の追加・変更(a)から(e)までの手続の後、検察官。被告人または弁護人は、必要があるときは、同様の方法で主張の追加・変更を行うとともに,追加の証拠調べ請求、請求に係る証拠の開示等をしなければならない(法316条の21・316条の22)。当事者双方が、必要に応じ,その主張・証拠請求の追加・変更等を繰り返すことにより、争点・証拠の整理が、一層具体化してゆくことが想定されている。
(h) 手点及び証拠の整理の結果の確認以上のような手続を経て、公判前整理手続を終了するに当たっては、裁判所は、検察官及び被告人または弁護人との間で事件の争点及び証拠の整理の結果を確認しなければならない(法316
条の24)。
具体的には、①両当事者が公判においてする予定主張の内容,②双方の予定主張を照合した結果明らかとなった争点、③公判において取り調べるべき証拠
及びその取調べの順序、方法等の事項について、裁判所から当事者に結果を提示し、確認をする。実務上は、この際に、裁判所が公判審理の実施に備え、両当事者と認識を共有しておくのが有用と思われるその他の審理計画に係る事項等、争点及び証拠の整理の結果以外の事項についても、併せて確認される。*法制審議会は、竜磁的記録である証拠の開示等について、大要、次のような法改
正要綱を答申している(網(骨子)「第1-4」)。
1 電磁的記録である証拠の閲覧等の機会の付与
(1)法299条1項の証拠書類
または証拠物の全部または一部が電磁的記録であるときは、当該電磁的記録に係る同項の規定による関覧する機会の付与は、相手方に対し、当該電磁的記録の内容を表示したものを関覧し、またはその内容を再生したものを視聴する機会を与えることによりする。(2)ア法316条の14第1項1号の証拠書類または証拠物の全部または一部が電磁的記録であるときは、当該電磁的記録に係る同号の規定による閲覧する機会の付与(被告人に対するものに限る。)は、当該電磁的記録の内容を表示したものを閲覧し、またはその内容を再生したものを視聴する機会を与えることによりするとし。当該電磁的記録に係る同号の規定による閲覧し、かつ、勝写する機会の付与は、その内容を表示したものを関覧し、またはその内容を再生したものを視聴し、かつ、当該電磁的記録を複写し若しくは印刷し、またはその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する機会を与えることによりする。イ 法316条の14第1項2号の供述録取書等の全部または一部が電磁的記録であるとき(当該供述録取書等を閲覧させることが相当でないと認めるときを除く。)は,当該電磁的記録に係る同号の規定による閲覧する機会の付与(被告人に対するものに限る。)
は、当該電磁的記録の内容を表示したものを閲覧し、またはその内容を再生したものを視聴する機会を与えることによりするとし、当該電磁的記録に係る同号の規定による閲覧し、かつ、謄写する機会の付与は、その内容を表示したものを閲覧し、またはその内容を再生したものを視聴し、かつ、当該電磁的記録を複写し、若しくは印刷し、またはその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する機会を与えることによりする。ウ法316条の14第1項2号の規定による証人、鑑定人,通訳人または翻訳人が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面を閲覧する機会の付与(被告人に対するものに限る。)は、これに代えて、当該要旨を記録した電磁的記録の内容を表示したものを閲覧する機会を与えることによりすることができるとし、同号の規定による閲覧し、かつ、謄写する機会の付与は、これに代えて、その内容を表示したものを閲覧し、かつ、当該電磁的記録を複写し、若しくは印刷し、またはその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する機会を与えることによりすることができる。エウの場合、法316条の14第1項2号の規定による開示をしたものとみなす。(3)法316条の
15第1項または316条の20第1項の規定による開示をすべき証拠の全部または一部が電磁的記録であるときにおけるこれらの規定による開示についても、(2)アと同様とする。(4)ア法316条の18第1号の証拠書類または証拠物の全部または一部が竜磁的記録であるときは、当該電磁的記録に係る同号の規定による閲覧し、かつ、謄写する機会の付与は、当該電磁的記録の内容を表示したものを関覧し、またはその内容を再生したものを視聴し、かつ、当該電磁的記録を複写し、若しくは印刷し、またはその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する機会を与えることによりする。イ法316条の18第2号の供述録取書等の全部または一部が電磁的記録であるとき(当該込録取書等を関覧させることが相当でないと認めるときを除く。)は、当該電磁的記録に係る同号の規定による関覧し、かつ。膣写する機会の付与は、当該電磁的記録の内容を表示したものを関覧し、またはその内容を再生したものを視感し、かつ、当該電機的記録を複写し、若しくは印刷し、またはその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する機会を与えることによりする。ウ法316条の18第2号の規定による証人、定人。通訳人または翻訳人が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面を閉覧し、かつ、膣写する機会の付与は、これに代えて、当該要旨を記録した電磁的記録の内容を表示したものを閲覧し、かつ、当該電機的記録を複写し。若しくは印刷し、またはその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する機会を与えることによりすることができる。この場合,同号の規定による開示をしたものとみなす。
2乱施的記録をもって作成された証拠の一覧表の提供等(1)検察官は、法
316条の14第1項の規定による証拠の開示をした後、被告人または弁護人から請来があったときは、速やかに、被告人または弁護人に対し、検察官が保管する証拠の一覧表であって電磁的記録をもって作成したものを提供し、またはこれを印刷した書面を交付しなければならない。(2)検察官は,(1)による提供または交付をした後、証拠を新たに保管するに至ったときは、速やかに、被告人または弁護人に対し、当該新たに保管するに至った証拠の一覧表であって電磁的記録をもって作成したものを提供し、またはこれを印刷した書面を交付しなければならない
(a)検察官による証明予定事実の明示とその証明に用いる証拠の取調べ請求
十分に争点及び証拠を整理するとともに、被告人側が防葉の準備を整えることができるようにするための前提として、まずは検察官が主張・立証の全体像を明らかにする。検察官は、公判期日において証拠により証明しようとする事実(「証明予定事実」という)を書面で裁判所及び被告人または弁護人に明らかにするとともに(「証明予定事実記載書面」と称する),証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない(法316条の13)。証明子定事実の記載については、事件の争点及び証拠の整理に必要な事項を具体的かつ簡潔に明示し(規則 217条の20第1項),事実とこれを証明するための証拠との関係を具体的に明示する等の適当な方法で,争点と証拠の整理が円滑に行われるよう努めなければならない(規則 217条の21)。無用詳細な記載は有害無益である。
裁判所は、検察官が証明予定事実記載書面を提出すべき期限と証拠調べを請求すべき期限を定めることができ(法316条の13第4項),検察官はその期限を厳守しなければならない(規則 217条の23)。
(b) 検察官請求証拠の開示さらに,検察官は、被告人または弁護人に対し、取調べを請求した「検察官請求証拠」を、次の方法で開示しなければならない(法316条の14)。①証拠書類または証拠物については、これを関覧及び勝写する機会を与えること(被告人の場合は関覧の機会のみ。以下同じ。法316条の14第1項1号)。②証人、鑑定人、通訳人または翻訳人については、その氏及で住居を知る機会を与えるとともに、その者の「供述録取等」(「鉄書、述を録取した書面で供述者の署名着しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であって供述を記録したものをいう」[法290条の3第1項])のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるものを閲覧及び勝写する機会を与えること(法316条の14第1項2号)。②の場合。供述録取書等が存在しないとき、またはこれを関覧させることが相当でないと認めるときは、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面を閲覧及び謄写する機会を与えなければならない。このように、証人予定者の氏名・住居のみならず(法 299条1項参照)。予定供述内容も併せ事前開示される。
* 検察官請求証拠開示の後、被告人側の請求により「検察官が保管する証拠の一覧表」を交付する手続が2016(平成 28)年改正により導入された。その内容は次のとおり。検察官は、法316条の14第1項による請求証拠の開示をした後、被告人または弁護人から請求があったときは、速やかに、被告人または弁護人に対し、「検察官が保管する証拠の一覧表」を交付しなければならない(同条2項)。一覧表の記載事項は、①証拠物の品名及び数量、②供述録取書の書面の標目,作成年月日及び供述者の氏名、③証拠書類(②を除く)の標目、作成年月日及び作成者の氏名とする(同条3項)。ただし、一覧表に記載することにより①人の身体もしくは財産に害を加えまたは人を怖させもしくは困惑させる行為がなされるおそれ、②人の名誉または社会生活の平穏が著しく書されるおそれ、③犯罪の証明または罪の捜査に支障を生ずるおそれがあると認めるものは、記載しないことができる(同条
4項)。
この一覧表交付制度は、被告人側が後記の類型証拠等の開示請求を行うに際し、請求対象を想定・識別するのに資する趣意で導入された。証拠そのものの開示ではなく、検察官が通常保管する証拠について知識経験が乏しい被告人・弁護人であっても開示請求を円滑・的確にできるようにするための配慮である。検察官保管証拠の個別具体的内容を被告人側に伝達するためのものではない。故に、この点についての求釈明(規則 208条)は想定されていない。他方、「証拠書類」について、弁護人が対象を想定・識別するのに資する程度の具体的表示(例.どのような事項に係る「捜査報告書」か推知可能な程度の表記)が望ましいといえよう。
(c)検察官請求証拠の証明力を判断するために重要な一定類型の証拠の開示(a/b)の手続により、検察官の主張・立証の全体像が明らかになるので、これに対し、被告人側が防としていかなる主張・立証をするか決めるのに資するため、数告人個が検察官舗光証拠の証明力を適切に判所できるようにする趣旨で、被告人側は一定類型の証拠の開示を請求することができる。これを、「類型証拠の開示」と称する(法316条の15)。
類型証拠開示の要件は、次のとおり。
①法の定める証拠の類型に該当すること。すなわち、証拠物(法316条の15第1項1号)、裁判所・裁判官による検証調香(同項2号)、捜査機関による検証・実況見分調書またはこれに準ずる書面(同項3号)、鑑定書またはこれに準ずる書面(同項4号)、証人等の供述録取書等(同項5号)。検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しょうとする事実の有無に関する供述を内容とする被告人以外の者の供述取書等(同項6号),被告人の供述録取書等(同項7号)、身体拘束を受けた被告人等の取調べ状況記録書面(同項8号)のいずれかに該当すること。なお、後記のとおり 2016(平成 28)年改正により類型証拠の範囲が拡張されている(*」。
②それが(b)で開示された「特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められる」こと(法 316条の15第1項柱書)。
③②の重要性の程度その他の被告人の防郷の準備のために開示をすることの必要性の程度ならびに開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、開示が相当と認められること(法316条の15第1項柱書)。
④被告人または弁護人から開示の請求があること。被告人または弁護人が開示請求をするときは、証拠の類型及び開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項、ならびに事案の内容、特定の検察官請求証拠に対応する証明予定事実
開示の請求に係る証拠と検察官請求証拠との関係その他の事情に照らし,開示の請求に係る証拠が検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であること
その他の被告人の防の準備のために開示が必要である理由を明らかにしなければならない(法316条の15第3項1号)。
被告人側の開示請求を受けた検察官は、以上の要件を検討して開示が相当と認めるときは、開示をしなければならない。まずは検察官が、証拠の重要性の程度その他被告人側の防禦準備のための必要性の程度と、例えば罪証隠滅、証人成迫。関係者の名誉・プライヴァシイの侵害など開示により生じるおそれのある弊害の内容・程度を勘案して、開示の相当性を判断することになる(法316条の15第1項)。なお、証人等を保護するための規定は、公判前整理手統における証拠開示についても準用される(法316条の23)。また。検察官は、必要と認めるときは、開示の時期・方法を指定し、または条件を付することができる(法316条の15第1項・2項)。例えば、即時または無条件の開示をすると弊害が生じるものの。
これを特定の時期まで開示しないものとすることにより、または一定の条件を付することによって、弊害の発生を防止することができると認められる場合に、開示の時期を指定し、あるいは、一定の条件を付するなどである。開示請求のあった証拠について、検察官がこれを開示しない場合には、その理由を被告人または弁護人に告げなければならない(規則 217条の26)。
*類型証拠開示の規定の趣意は、捜査過程を経て検察官のもとに集積・保管される事件に関する多様な資料のうち,一般的・類型的に被告人側の反証準備にとって重要と認められ、他方。具体的弊害が一般的にきしく、防準備に資するため被告人
側に配分するのが相当と認められるものを第一段階の開示対象として列記したものである。
2016(平成28)年に類型証拠開示の対象を拡大する法改正が行われた。付加されたのは、被告人の共犯として身体拘束されまたは起訴された者であって、検察官が証人尋問請求する予定の者の取調べ状況を記録した書面(法 316条の15第1項8号),検察官請求証拠である証拠物の押収手続記録書面(捜査機関が職務上作成を表務付けられる書面で、証拠物の押収に関し、その押収者、押収年月日、押収場所その他押収の状況を記録したもの)(同条同項9号),類型証拠として開示すべき証拠物の押収手続記録書面(同条2項)である(これについては、開示請求に際して、当該書面を識別するに足りる事項、ならびに開示すべき証拠物と特定の検察官請求証拠との関係その他の事情に照らし、当該証拠物により当該検察官請求証拠の証明力判断のために当該開示が必要である理由を明らかにしなければならない[同条3項2号])。
**捜査機関が自ら知覚した内容を踏まえての考察、意見等を記載した捜査報告書については、知覚・認識された事実の報告部分は類型証拠たる「被告人以外の者の供述録取書等であって、検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」(法316条の15第1項6号)に該当し得る。また、捜査機関が被告人以外の者から聴取した結果を記載した捜査報告書も。捜査機関の「供述書」であり、「述録取書等」の定義(供述書。供述を鉄期した書面で供者の署名若しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であって供述を記録したもの」[法290条の3第1項])に当たる。
類型証拠開示の目的は、「事実の有無に関する供述」の存在とその供述内容を被告人鯛に伝達して防界準備に資することにあり、犯罪事実認定に係る証拠法則である伝開法則とは無関係である。故に、このような捜査報告書に記載された被告人以外の者の供述は、伝開法則の観点からは証拠能力の認められないものであっても。前記6号には該当し開示の対象となり得ると解すべきである。これに対し、6号の「供述」には伝開は含まれないとする裁判例がある(東京高決平成18・10・16判時1945号166頁、大阪高決平成 18・10・6判時1945号166頁)。
***実務上、手続の早い時点(前記。証明予定事実記載書面の提示と検察官請求証拠の取調べ請求の前後の段階)において、検察官が請求証拠以外の類型証拠や後記の主張関連証拠に該当するであろうと思われる証拠を開示して、被告人側の防禦準備を促進させる運用がしばしば行われている(「任意開示」と称される)。任意開示の対象となる典型的な類型証拠としては、請求証拠以外の実況見分調書(法316条15第1項3号),重要証人の供述録取書等(同項5号),被告人の供述録取書等(同項7号)などがあり、事案により被告人等に係る取調べ状況記録書面(同項8号)などが想定される。弁護人は、このような任意開示された証拠及び検察官保管証拠の一覧表(法316条の14第2項・3項)の検討をも踏まえて、さらに類型証拠等の開示請求の要否を検討することになる。公判前整理手続全体の迅速化に資する適切な運用といえよう。
(a) 被告人側の主張の明示と証拠調べ請求等このようにして被告人側には、あらかじめ検察官の主張・立証の全体像が具体的に示されるのみならず。
検察官請求証拠の証明力を判断するために重要な一定類型の証拠の開示を受けることができる。そこで法は、これらの手続終了後であれば、被告人側に、あらかじめ公判でする予定の主張等を明らかにするよう求めても、防の利益を損なうものではないことから,被告人側に一定の応答を義務付けている。検察官による証明予定事実の明示,その証明に用いる証拠の取調べ請求及びその開示、検察官請求証拠の証明力を判断するために重要な一定類型の証拠の開示が行われた後、被告人または弁護人は、次の応答をしなければならない。
①検察官請求証拠について、法326条の同意をするかどうかなどの証拠意見を明らかにすること(法 316条の16第1項)。
②証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及
ご注律上の主張があるときは、裁判所及び検察官に対し、これを明らかにすること(法316条の17第1項、規則217条の20第2項・217条の21)。「事実上の主張」とは、裁判所による認定を要する事実に関する被告人側の主張であり、積極的な事実主張のほか、検察官が明示した個別の証明予定事実に対する否認の主張も含まれる。「法律上の主張」とは、法令に関する主張であり、刑覇法令の解釈,合憲性、法令の適用等に関する主張をいう。
③被告人側に証明予定事実があるときは、その証明に用いる証拠の取調べを請求すること(法316条の17第2項)。
④被告人側の請求証拠を検察官側に開示すること(法 316条の18)。被告人側請求証拠の開示の方法は、検察官請求証拠の場合と同じである。検察官は、被告人側請求証拠の開示を受けたときは、これに対する証拠意見を明らかにしなければならない(法316条の19)。
裁判所は、被告人側の主張明示や証拠調べ請求の期限を定めることができる(注316条の17第3項)。また、当事者双方に対し、相手方に対する証拠意見を明らかにすべき期限を定めることができ(法316条の16第2項・316条の19第2項),訴訟関係人は期限を守らなければならない(規則217条の23)。もっとも裁判所は、期限までに意見や主張が明らかにされず,または証拠調べ請求がない場合でも、公判の審理を開始するのを相当と認めるときは、公判前整理手続を終了することができる(規則 217条の24)。
なお。最高裁判所は、法が被告人に対し主張明示義務及び証拠調べ請求義務を定めていることについて、「被告人又は弁護人において、公判期日においてする予定の主張がある場合に限り、公判期日に先立って、その主張を公判前整理手続で明らかにするとともに、証拠の取調べを請求するよう義務付けるものであって,被告人に対し自己が刑事上の責任を問われるおそれのある事項について認めるように義務付けるものではなく、また、公判期日において主張をするかどうかも被告人の判断に委ねられている」ことから、自己負罪拒否特権(憲法 38条1項)に違反しないと判断している(最決平成25・3・18刑集67巻3号
325頁)〔第1編捜査手続第9章II.3(1]。
*最高裁判所は主張明示義務と公判期日における被告人質問の制限の可否との関係について、のように説示して、公判期日での新たな主張が制限される場合があり得る旨指摘している(最決平成 27・5・25刑集69巻4号636頁)。
「公判前塾理手続は、充実した公判の審理を継続的。計画的かつ迅速に行うため、事件の争点及び証拠を整理する手続であり、訴訟関係人は、その実施に関して協力する義務を負う上、被告人又は弁護人は、刑訴法316条の17第1項所定の主張明示義務を負うのであるから、公判期日においてすることを予定している主張があるにもかかわらず、これを明示しないということは許されない。・・・・・・公判前整理手続終了後の新たな主張を制限する規定はなく、公判期日で新たな主張に沿った被告人の供述を当然に制限できるとは解し得ないものの、公判前警理手統における被告人又は弁護人の予定主張の明示状況(裁判所の求釈明に対する釈明の状況を含む。)、新たな主張がされるに至った経緯、新たな主張の内容等の諸般の事情を総合的に考慮し、前記主張明示義務に遊反したものと認められ、かつ、公判前整理手続で明示されなかった主張に関して被告人の供述を求める行為(質問)やこれに応じた被告人の供述を許すことが、公判前整理手続を行った意味を失わせるものと認められる場合(例えば、公判前整理手続において、裁判所の求釈明にもかかわらず、「アリバイの主張をする予定である。具体的内容は被告人質問において明らかにする。」という限度でしか主張を明示しなかったような場合)には、新たな主張に係る事項の重要性等も踏まえた上で、公判期日でその具体的内容に関する質問や被告人の供述が、刑訴法 295条1項により制限されることがあり得るというべきである。」(e) 被告人側の主張に関連する証拠の開示さらに法は、(d)で示される被告人側の主張に関連する証拠の開示について定める。これは、被告人側が具体的に明らかにした主張によって生じた争点に関連する証拠を開示することにより、さらなる争点整理や被告人側の防準備を可能にする趣旨である。「主張関連証拠の開示」と称される。主張関連証拠開示の要件は次のとおり(法 316条の20)。
①被告人または弁護人が明らかにした事実上及び法律上の主張に関連すると認められる証拠であること。主張との関連性は抽象的なものでは足りない。
②その関連性の程度その他の被告人の防の準備のために該開示をすることの必要性の程度と開示によって生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、開示が相当と認められること。
③被告人または弁護人から開示の請求があること。
開示は、他の場合同様、閲覧・謄写の機会を与える方法による。検察官が、必要と認めるときは、開示の時期・方法を指定し、または条件を付することができる点も同様である。
*最高裁判所は、捜査機関が取調べ等捜査の過程で作成したメモについて、それが当該事件の捜査の過程で作成され、公務員が職務上現に保管し、かつ、検察官において入手が容易なものは、被告人側主張との関連性・必要性が認められる場合、証拠開示命令の対象になり得るとの判断を示している。(最決平成19・12・25刑集61巻9号895頁,最決平成20・6・25集62巻6号1886頁、最決平成20・9・30刑集62巻8号 2753頁)。
被告人側の具体的主張と反証準備に資する素材の発見・伝達を通じて一層の争点理を進めるという法目的から、開示対象の範囲が、1現に検察官の手中に在るかを問わず、贅察官等が保管し、入手・伝達が容易であるものにも及ぶこと、2)事業の背景事情によっては当該被告事件の捜査と密接に関連する他事件の捜査過程で作成された取調べメモ等も対象となる場合はあり得よう。
もっとも、それらの内容は争点の「事実」に係る記載であることが前提であり、捜査・訴追側の事実の評価。法的見解、捜査方針等に係る意見(ワークプロダクト)は開示対象にはならないというべきである。
(f) 証拠開示に関する裁定
以上のような証拠開示の要否の判断をめぐっ
て、検察官と被告人側との間で争いが生じた場合には、公判前整理手続を主宰する裁判所がこれを裁定する次のような制度・手続が設けられている。
①開示時期の指定等。前記のとおり,検察官,被告人・弁護人は、取調べ請求する証拠を開示しなければならないが、裁判所は、開示すべき事者の請求により、開示の必要性の程度ならびに弊害の内容及び程度等を考慮し、必要と認めるときは、決定で、開示の時期・方法を指定し、または条件を付することができる(法 316条の25)。
②開示命令。裁判所は、法の規定により当事者が開示すべき証拠を開示していないと認めるときは、相手方の請求により,決定で、当該証拠の開示を命じなければならない。その際、開示の時期・方法を指定し、または条件を付することもできる(法316条の26)。なお、前記のとおり、検察官は、証拠開示に際して開示の時期・方法を指定したり条件を付することができるが、これに対して被告人側は、検察官が付した条件等に不服があれば、開示命令の請求をすることができ、裁判所は、その条件等が不当であると判断した場合、無条件の開示や新たな条件等のもとでの開示を命ずることもできる。
以上のような裁定のための裁判所の決定に対しては、即時抗告をすることができる(法316条の26 第3項)。
裁判所は、裁定をするため必要と認めるときは、請求に係る証拠の提示を命ずることができる。また、裁判所は、被告人側から開示命令の請求があった場合に、検察官に対し。その保管証拠のうち裁判所の指定する範囲に属するものの標日を記載した一覧表の提示を命ずることもできる。ただし、この証拠の提示命令や一覧表の提示命令は、裁判所が裁定を的確に行うことができるようにする趣意であるから、提示された証拠及び一覧表は、何人にも閲覧または勝写をさせることができない(法316条の27)。
*即時抗告の提起期間は3日であり(法422条)。原決定が告知された日から進行する(法 358条)。初日を算入しないので、期間の起算日は決定告知の翌日である(法55条1項)。従前、原決定謄本が被告人と弁護人の双方に日を異にして送達された場合の抗告提起期間は、被告人に送達された日から進行するという判例があったが(例、上告棄却決定に対する異議申立てについて、最決昭和32・5・29刑集11巻5号1576頁、保釈請求却下決定に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告について、最決昭和43・6・19刑集 22巻6号 483頁),最高裁判所は、証拠開示命令請求棄却決定に対する即時抗告の提起期間について、弁護人に同決定謄本が送達された日から進行するとした(最決平成23・8・31 刑集65巻5号935頁)。裁定請求の主体は弁護人であり、弁護人が、被告人ではなく弁護人自身に対して証拠を開示することを命じる旨求めているという請求の形式等がその理由とされている。
** 証拠開示制度は、法の欠落を埋め、事件の争点整理を促進させる公判前整理手続の目的に関連付けて設計・導入されたものである。これに対して、公判前整理手続に付されない事件については、従前の事前準備に関する規律と、公判審理に入ってから裁判所の訴訟指揮権に基づく証拠開示命令の途を認めた最高裁判例が存するところであるが(判例は、裁判所は、証拠調べの段階に入った後、弁護人から具体的必要性を示して一定の証拠閲覧の申出があれば、その訴訟指揮権にもとづき、事案の性質,審理の状況、閲覧を求める証拠の種類及び内容、閲覧の時期、程度及び方法などを考慮し、それが被告人の防興のためにとくに重要であり、かつこれによって罪証隠滅,証人威迫などのおそれがなく、相当と認めるときは、検察官に対し、その所持する証拠を弁護人に閲覧させるよう命ずることができるとする[最決昭和 44・4・25刑集23巻4号248頁]),第1回公判期日前ないし審理中に証拠開示をめぐる当事者間の争いが顕在化した場合には、公判審理の継続性・迅速性が阻害されるおそれがあるので、裁判所は事件を公判前整理手続(法316条の2)または期日間整理手続(法 316条の28)に付する決定を行い、完備された証拠開示制度を利用できるようにするのが適切であろう。なお、実務では、整理手続に付さない場合でも、規則178条の6第1項1号の規定に係わらず、当事者間で類型証拠開示や主張関連証拠開示に準じた任意の証拠開示が行われる例もあり、これが、争点整理や被告人側の防票準備を促す役割を果たしている。
***検察官による証拠開示は、現に係属する被告事件について、十分な争点整理と被告人側の防準備に資することを目的とする。開示証拠の複製等が第三者に交付されるなどすれば、罪証隠減、証人成道、関係者の名誉・プライヴァシイの侵害等の弊害が拡大するおそれがある。また。開示証拠の目的外使用が無制約に行われると。検察官及び裁判所は証拠開示の要否の判断において、目的外使用による弊害の可能性をも考慮しなければならず、かえって、開示の範囲が狭くなるおそれがある。そこで、法は、開示証拠が本来の目的にのみ使用されることを担保し、開示がされやすい環境を整え、ひいては証拠開示制度の適正な運用を確保する趣旨で、被告人または弁護人等による開示証拠の目的外使用を禁止する旨を明記している。被告人、弁護人またはこれらであった者は、検察官から被告事件の審理の準備のために開示された証拠に係る複製等を、当該事件の審理など被告事件に係る裁判のための審理のほか法所定の手続またはその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、提示し、または電気通信回線を通じて提供してはならない(法281条の4)。目的外使用には刑事罰も設けられており(法 281条の5)、また目的外使用の禁止と併せ、弁護人は開示証拠の複製等を適正に管理し、その保管をみだりに他人にゆだねてはならない旨定めがある(法281条の3)。不適正管理が弁護士倫理に反し懲戒に価するのはもとよりである。
(g) 当事者双方による主張・証拠請求の追加・変更(a)から(e)までの手続の後、検察官。被告人または弁護人は、必要があるときは、同様の方法で主張の追加・変更を行うとともに,追加の証拠調べ請求、請求に係る証拠の開示等をしなければならない(法316条の21・316条の22)。当事者双方が、必要に応じ,その主張・証拠請求の追加・変更等を繰り返すことにより、争点・証拠の整理が、一層具体化してゆくことが想定されている。
(h) 手点及び証拠の整理の結果の確認以上のような手続を経て、公判前整理手続を終了するに当たっては、裁判所は、検察官及び被告人または弁護人との間で事件の争点及び証拠の整理の結果を確認しなければならない(法316
条の24)。
具体的には、①両当事者が公判においてする予定主張の内容,②双方の予定主張を照合した結果明らかとなった争点、③公判において取り調べるべき証拠
及びその取調べの順序、方法等の事項について、裁判所から当事者に結果を提示し、確認をする。実務上は、この際に、裁判所が公判審理の実施に備え、両当事者と認識を共有しておくのが有用と思われるその他の審理計画に係る事項等、争点及び証拠の整理の結果以外の事項についても、併せて確認される。*法制審議会は、竜磁的記録である証拠の開示等について、大要、次のような法改
正要綱を答申している(網(骨子)「第1-4」)。
1 電磁的記録である証拠の閲覧等の機会の付与
(1)法299条1項の証拠書類
または証拠物の全部または一部が電磁的記録であるときは、当該電磁的記録に係る同項の規定による関覧する機会の付与は、相手方に対し、当該電磁的記録の内容を表示したものを関覧し、またはその内容を再生したものを視聴する機会を与えることによりする。(2)ア法316条の14第1項1号の証拠書類または証拠物の全部または一部が電磁的記録であるときは、当該電磁的記録に係る同号の規定による閲覧する機会の付与(被告人に対するものに限る。)は、当該電磁的記録の内容を表示したものを閲覧し、またはその内容を再生したものを視聴する機会を与えることによりするとし。当該電磁的記録に係る同号の規定による閲覧し、かつ、勝写する機会の付与は、その内容を表示したものを関覧し、またはその内容を再生したものを視聴し、かつ、当該電磁的記録を複写し若しくは印刷し、またはその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する機会を与えることによりする。イ 法316条の14第1項2号の供述録取書等の全部または一部が電磁的記録であるとき(当該供述録取書等を閲覧させることが相当でないと認めるときを除く。)は,当該電磁的記録に係る同号の規定による閲覧する機会の付与(被告人に対するものに限る。)
は、当該電磁的記録の内容を表示したものを閲覧し、またはその内容を再生したものを視聴する機会を与えることによりするとし、当該電磁的記録に係る同号の規定による閲覧し、かつ、謄写する機会の付与は、その内容を表示したものを閲覧し、またはその内容を再生したものを視聴し、かつ、当該電磁的記録を複写し、若しくは印刷し、またはその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する機会を与えることによりする。ウ法316条の14第1項2号の規定による証人、鑑定人,通訳人または翻訳人が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面を閲覧する機会の付与(被告人に対するものに限る。)は、これに代えて、当該要旨を記録した電磁的記録の内容を表示したものを閲覧する機会を与えることによりすることができるとし、同号の規定による閲覧し、かつ、謄写する機会の付与は、これに代えて、その内容を表示したものを閲覧し、かつ、当該電磁的記録を複写し、若しくは印刷し、またはその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する機会を与えることによりすることができる。エウの場合、法316条の14第1項2号の規定による開示をしたものとみなす。(3)法316条の
15第1項または316条の20第1項の規定による開示をすべき証拠の全部または一部が電磁的記録であるときにおけるこれらの規定による開示についても、(2)アと同様とする。(4)ア法316条の18第1号の証拠書類または証拠物の全部または一部が竜磁的記録であるときは、当該電磁的記録に係る同号の規定による閲覧し、かつ、謄写する機会の付与は、当該電磁的記録の内容を表示したものを関覧し、またはその内容を再生したものを視聴し、かつ、当該電磁的記録を複写し、若しくは印刷し、またはその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する機会を与えることによりする。イ法316条の18第2号の供述録取書等の全部または一部が電磁的記録であるとき(当該込録取書等を関覧させることが相当でないと認めるときを除く。)は、当該電磁的記録に係る同号の規定による関覧し、かつ。膣写する機会の付与は、当該電磁的記録の内容を表示したものを関覧し、またはその内容を再生したものを視感し、かつ、当該電機的記録を複写し、若しくは印刷し、またはその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する機会を与えることによりする。ウ法316条の18第2号の規定による証人、定人。通訳人または翻訳人が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面を閉覧し、かつ、膣写する機会の付与は、これに代えて、当該要旨を記録した電磁的記録の内容を表示したものを閲覧し、かつ、当該電機的記録を複写し。若しくは印刷し、またはその内容を表示し若しくは再生したものを記載し若しくは記録する機会を与えることによりすることができる。この場合,同号の規定による開示をしたものとみなす。
2乱施的記録をもって作成された証拠の一覧表の提供等(1)検察官は、法
316条の14第1項の規定による証拠の開示をした後、被告人または弁護人から請来があったときは、速やかに、被告人または弁護人に対し、検察官が保管する証拠の一覧表であって電磁的記録をもって作成したものを提供し、またはこれを印刷した書面を交付しなければならない。(2)検察官は,(1)による提供または交付をした後、証拠を新たに保管するに至ったときは、速やかに、被告人または弁護人に対し、当該新たに保管するに至った証拠の一覧表であって電磁的記録をもって作成したものを提供し、またはこれを印刷した書面を交付しなければならない