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弁護士の知識

検証・鑑定|鑑定|鑑定留置

2025年11月19日

『刑事訴訟法』 酒卷 匡著・2024年9月20日
ISBNISBN978-4-641-13968-8

(1) 捜査機関が、法223条に基づき被疑者の心神または身体に関する鑑定を嘱託する場合に、被疑者を病院その他の相当な場所に留置することが必要となるときは、捜査機関(検察官、検察事務官または司法響察員)から裁判官に対してその処分を請求し(鑑定留置請求書の記載要件は規則158条の2・158条の3),裁判官は、請求を相当と認めるときは、留置の期間等を定めた「鑑定留置状」という状を発する(状の記載要件は規則 302条2項・130条の2。勾留状の個人特定事項の秘匿措置に関する規定が準用される場合の「鑑定留置状に代わるもの」の記載要件は規則158条の4・158条の7)。これを「鑑定留置」という(法224条・167条)。
請求を受けた裁判官は、鑑定留置の必要性。留置の期間、留置場所等の相当性を判断することになる。なお、裁判官は留置期間の延長・短縮をすることができる(法 224条2項・167条4項)。
(2)定留置は、被疑者の身体拘束を伴う処分である点で勾と類似するため、勾留に関する規定が準用される(法224条2項・167条5項)。また。勾留手続における個人特定事項の秘匿措置に関する規定が準用されている(法224条3項・224条の2)。なお鑑定留置処分に対する不服申立てに関しては、準抗告をすることができる旨の明文規定がある(法429条1項3号)。勾留中の被疑者について鑑定留置が行われたときは、その期間、勾留の執行が停止されたものとされる(法 224条2項・167条の2)。
(3) 鑑定留置の場所は「病院その他の相当な場所」である(法224条2項・
167条1項)。例えば、被疑者の責任能力の有無・程度について相当の期間をかけて精神鑑定等を行う場合には、保護設備の整った精神科病院が留置場所に適するであろう。もっとも、看守・戒護の観点から「相当な場所」として刑事施設(拘置所等)を留置場所とすることもあり得る。
ちなみに、責任能力の有無・程度が争点となり得る重大事件が裁判員裁判の対象事件とされていることから、起訴前に十分な精神鑑定を実施しておくのが適切との観点から、捜査段階での鑑定留置が実施される例がしばしば認められるようになっている。