所得税の還付金の還付請求権
2025年12月12日
Q&A 弁護士のための相続税務70
中央経済社
Q:父が9月に死亡しました。長男の私は所得税の準確定申告書を12月 に提出し、その年の7月に既に納付した予定納税額のうち一部の還付を受 けました。この還付金は相続財産となるのでしょうか。
A :予定納税額の還付金及び還付加算金は、被相続人の死亡後、相続人につ いて発生するものですが、所得税の準確定申告に係る還付金は、被相続人の相 続財産であり、相続税の課税価格に算入しなければなりません。
解説
(1) 所得税の準確定申告
被相続人が年の中途に死亡した場合は、その人の1月1日から相続開始の日 までに確定した所得金額及び税額について、相続人は、その相続の開始があっ たことを知った日の翌日から4か月以内に、所得税の準確定申告書を提出しな ければなりません(所法125②)。
(2) 所得税の還付金の還付請求権
還付金の還付請求権は被相続人の本来の相続財産であり、相続税の課税の対 象となります。還付金の還付請求権は、被相続人の相続開始時点において発生 しておらず相続財産に含まれないとの見方もできますが、被相続人の生存中に 潜在的な請求権が被相続人に帰属しており、これが被相続人の死亡により顕在 化したものと考えられます。
したがって、還付金の還付請求権に基づいて還付金を取得した場合は、相続 税の課税の対象となります。
(3) 還付申告書の提出
確定申告の必要がない人の還付申告は、還付申告をする年分の翌年1月1日 から5年間行うことができます。したがって、これまでに所得税の確定申告書 を提出していなかった場合、例えば、令和元年分については、令和6年12月31 日まで申告することができます。同様に、令和5年分については、令和6年1 月1日から令和10年12月31日まで申告することができます。
準確定申告の申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か 月以内ですが、この期限を過ぎても、還付を受けるために準確定申告を行おう とする場合、5年以内であれば還付申告を行うことは可能です。
ただし、還付金は相続税の課税対象になるため、相続税の申告が必要と見込 まれる場合には、相続税の申告期限 (相続の開始があったことを知った日の翌 日から10か月以内)までに、還付申告を完了させておくことが望ましいといえ ます。相続税の申告期限後に還付金を受け取った場合は、修正申告を行う必要 がありますので注意が必要です。
(4) 過納金の還付請求権
相続人が、その母の死亡により相続した財産に係る相続税の申告をしたとこ ろ、母が生前に提起して相続人が承継していた所得税更正処分等の取消訴訟に おいて同処分等の取消判決が確定したことから、過納金が還付され、所轄税務 署長から過納金の還付請求権は相続財産を構成するとして相続税の更正処分を 受けたため、還付請求権は相続開始後に発生した権利であるから相続財産を構 成しないと主張して、同処分の一部の取消しを求めた事案があります。
この点、被相続人が、所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分に基 づき、所得税、過少申告加算税及び延滞税を納付するとともに上記各処分の取 消訴訟を提起していた場合において、その係属中に被相続人が死亡したため。 相続人が同訴訟を承継し、上記各処分の取消判決が確定したときは、上記所得 税等に係る過納金の還付請求権は、被相続人の相続財産を構成し、相続税の課 税財産となると解するのが相当であると判断されています。
(5) 還付加算金
還付加算金は、相続人が確定申告書の提出によって原始的に取得するもので、 被相続人からの相続によって取得するものとは認められないため、相続人の所 得税(雑所得)の課税対象となり、相続税の課税価格には算入されません。 相続人などの責任に基づいて納付したり、徴収されることになった延滞税や 加算税などは遺産総額から差し引くことはできませんが、このことと同様の考 え方といえます。
A :予定納税額の還付金及び還付加算金は、被相続人の死亡後、相続人につ いて発生するものですが、所得税の準確定申告に係る還付金は、被相続人の相 続財産であり、相続税の課税価格に算入しなければなりません。
解説
(1) 所得税の準確定申告
被相続人が年の中途に死亡した場合は、その人の1月1日から相続開始の日 までに確定した所得金額及び税額について、相続人は、その相続の開始があっ たことを知った日の翌日から4か月以内に、所得税の準確定申告書を提出しな ければなりません(所法125②)。
(2) 所得税の還付金の還付請求権
還付金の還付請求権は被相続人の本来の相続財産であり、相続税の課税の対 象となります。還付金の還付請求権は、被相続人の相続開始時点において発生 しておらず相続財産に含まれないとの見方もできますが、被相続人の生存中に 潜在的な請求権が被相続人に帰属しており、これが被相続人の死亡により顕在 化したものと考えられます。
したがって、還付金の還付請求権に基づいて還付金を取得した場合は、相続 税の課税の対象となります。
(3) 還付申告書の提出
確定申告の必要がない人の還付申告は、還付申告をする年分の翌年1月1日 から5年間行うことができます。したがって、これまでに所得税の確定申告書 を提出していなかった場合、例えば、令和元年分については、令和6年12月31 日まで申告することができます。同様に、令和5年分については、令和6年1 月1日から令和10年12月31日まで申告することができます。
準確定申告の申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か 月以内ですが、この期限を過ぎても、還付を受けるために準確定申告を行おう とする場合、5年以内であれば還付申告を行うことは可能です。
ただし、還付金は相続税の課税対象になるため、相続税の申告が必要と見込 まれる場合には、相続税の申告期限 (相続の開始があったことを知った日の翌 日から10か月以内)までに、還付申告を完了させておくことが望ましいといえ ます。相続税の申告期限後に還付金を受け取った場合は、修正申告を行う必要 がありますので注意が必要です。
(4) 過納金の還付請求権
相続人が、その母の死亡により相続した財産に係る相続税の申告をしたとこ ろ、母が生前に提起して相続人が承継していた所得税更正処分等の取消訴訟に おいて同処分等の取消判決が確定したことから、過納金が還付され、所轄税務 署長から過納金の還付請求権は相続財産を構成するとして相続税の更正処分を 受けたため、還付請求権は相続開始後に発生した権利であるから相続財産を構 成しないと主張して、同処分の一部の取消しを求めた事案があります。
この点、被相続人が、所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分に基 づき、所得税、過少申告加算税及び延滞税を納付するとともに上記各処分の取 消訴訟を提起していた場合において、その係属中に被相続人が死亡したため。 相続人が同訴訟を承継し、上記各処分の取消判決が確定したときは、上記所得 税等に係る過納金の還付請求権は、被相続人の相続財産を構成し、相続税の課 税財産となると解するのが相当であると判断されています。
(5) 還付加算金
還付加算金は、相続人が確定申告書の提出によって原始的に取得するもので、 被相続人からの相続によって取得するものとは認められないため、相続人の所 得税(雑所得)の課税対象となり、相続税の課税価格には算入されません。 相続人などの責任に基づいて納付したり、徴収されることになった延滞税や 加算税などは遺産総額から差し引くことはできませんが、このことと同様の考 え方といえます。