遺留分侵害額請求と申告義務
2025年12月12日
Q&A 弁護士のための相続税務70
中央経済社
Q:父が亡くなりました。相続人は私と弟の2人ですが、弟は父と折り 合いが悪かったため、父はすべての財産を私に遺すという遺言を作成して いました。 申告期限まであと2か月と迫ったところ、弟から遺留分侵害額請求を行 う旨の通知が届きました。
A:弟様から遺留分侵害額請求があった場合においても遺言は有効であるた め、遺言内容に沿った申告を行います。 後日、遺留分侵害額が確定し、あなたが取得する財産が減少した場合には、 その支払うべき金額が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に限り、 更正の請求を行うことで、税金の還付を受けることができます。
解説:
(1)遺留分侵害額請求
被相続人は、自己の財産である遺産をどのように処分するかを自由に決定で きるのが原則であり、生前の贈与や遺言による遺贈、特定財産承継遺言、相続 分の指定などにより、自由に財産を処分することができます。
しかし、この自由を制限する制度として、兄弟姉妹以外の相続人には、遺留 分として、遺産7の一定割合を取得することができる権利が定められています (民法1042-1045)。
この権利を侵害されている場合には、権利者は、受遺者8又は受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます (民法1046 ①)。
このため、本事例では、相談者は遺言により全遺産を承継しますが、遺留分 侵害額請求により、弟に金銭を支払うとすれば、相続により承継した遺産は実 質的に減少することになります。
(2)遺留分侵害額請求が行われた場合の申告
遺留分侵害額請求が行われた場合において、当事者間に争いがあり、その額 が確定していない状況では、遺留分侵害額を加味した申告を行うことは困難で す。このような場合には、遺留分侵害額請求が行われていないものとして課税 価格を計算し申告することとされています (相基通11の2-4)。
(3)更正の請求
更正の請求とは、納税義務者が申告した税額が法律の規定に従っていなかっ た場合又はその計算に誤りがあった場合に、法定申告期限から5年以内に限 り、多す ぎた税額の減額更正処分を求める行為です (通法23①)。
なお、相続税においては、次の事由が発生した場合は、上記の更正の請求の 期限 (法定申告期限から5年以内) にかかわらず、事由が発生した日の翌日か ら4か月以内 に、更正の請求を行うことができます (相法32①) (後記44(2)参 照)。
① 未分割の財産が分割された
② 認知、廃除等による相続人の異動があった
③ 遺留分侵害額請求権が行使された
④ 遺贈に係る遺言書が発見された・遺贈が放棄された
A:弟様から遺留分侵害額請求があった場合においても遺言は有効であるた め、遺言内容に沿った申告を行います。 後日、遺留分侵害額が確定し、あなたが取得する財産が減少した場合には、 その支払うべき金額が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に限り、 更正の請求を行うことで、税金の還付を受けることができます。
解説:
(1)遺留分侵害額請求
被相続人は、自己の財産である遺産をどのように処分するかを自由に決定で きるのが原則であり、生前の贈与や遺言による遺贈、特定財産承継遺言、相続 分の指定などにより、自由に財産を処分することができます。
しかし、この自由を制限する制度として、兄弟姉妹以外の相続人には、遺留 分として、遺産7の一定割合を取得することができる権利が定められています (民法1042-1045)。
この権利を侵害されている場合には、権利者は、受遺者8又は受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます (民法1046 ①)。
このため、本事例では、相談者は遺言により全遺産を承継しますが、遺留分 侵害額請求により、弟に金銭を支払うとすれば、相続により承継した遺産は実 質的に減少することになります。
(2)遺留分侵害額請求が行われた場合の申告
遺留分侵害額請求が行われた場合において、当事者間に争いがあり、その額 が確定していない状況では、遺留分侵害額を加味した申告を行うことは困難で す。このような場合には、遺留分侵害額請求が行われていないものとして課税 価格を計算し申告することとされています (相基通11の2-4)。
(3)更正の請求
更正の請求とは、納税義務者が申告した税額が法律の規定に従っていなかっ た場合又はその計算に誤りがあった場合に、法定申告期限から5年以内に限 り、多す ぎた税額の減額更正処分を求める行為です (通法23①)。
なお、相続税においては、次の事由が発生した場合は、上記の更正の請求の 期限 (法定申告期限から5年以内) にかかわらず、事由が発生した日の翌日か ら4か月以内 に、更正の請求を行うことができます (相法32①) (後記44(2)参 照)。
① 未分割の財産が分割された
② 認知、廃除等による相続人の異動があった
③ 遺留分侵害額請求権が行使された
④ 遺贈に係る遺言書が発見された・遺贈が放棄された