養子縁組
2025年12月12日
Q&A 弁護士のための相続税務70
中央経済社
Q:私の身内は既に嫁いだ長女1人だけです。代々の財産を守っていく ために、娘の長男と次男を養子に迎えようと考えています。
A:ご長女のお子様を養子にすることで、お孫様への相続が可能となり、財 産を守るという目的は達成できると思料します。また、ご長女のお子様を養子 に迎えることで相続税の節税が可能なケースもあります。ただし、この場合, 親族間の人間関係にも影響しますので、事前に話し合いの場を設けるなどして、 軋轢が残らないよう対応することが肝要といえます。
解説:
(1)養子縁組の効力
養子縁組を行った場合、養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得する こととされています(民法809)。養親の相続が開始した場合、養子は第1順位 の相続人となりますから、遺産分割協議へ参加し、財産を引き継ぐことができ ます。
孫を養子にすることで、一代飛ばして財産を相続させることができるため、 将来の子の相続も含めて考えると節税になるケースも考えられます。
(2)養子の子の代襲相続権
養子縁組を行った子が、養親の相続開始前に亡くなっていた場合、その養子 の子は代襲相続人になり得るのでしょうか。
養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得することとなるのは前述のと おりです。つまり、縁組前には養親との血族関係はありません。そのため、その養子の子が縁組前に生まれていた場合は、養子の子には、養親との血族関係 は生じず、養親の直系卑属に当たりませんので、代襲相続人になることはでき ません(民法887②但書)。これに対して、縁組後に養子に子が生まれた場合に は、養親と養子に血族関係が生じてから生まれた子になるため、代襲相続人と なることができます。
したがって、養子が既に亡くなっている場合で、その養子に子がいる場合には、 養子縁組の日と養子の子の出生日を確認した上で、相続人の範囲を判断します。
なお、やや例外的な事例ですが、被相続人が実子(A)の配偶者(B)と養 子縁組し、その時点で既にAとBの間に子 (被相続人の孫。C)が出生してい た場合において、被相続人の相続開始前にBが死亡した事例を考えます。この 場合、Cは、被相続人とBの養子縁組前に出生した子であるため、Bを代襲相 続しないかのようにも思えます。しかし、Cは、Aの子として被相続人の直系 卑属であるため、CはBの代襲相続人となると解されています。
(3)相続税計算上の留意点
① 法定相続人の数への算入制限
相続税を計算する上では、基礎控除額の計算など、相続人の人数が重要とな る規定(前記3(4)②参照)があります。これらの規定を適用する上では、相続 税法上の相続人が誰か、その相続人の人数は何人かを考える必要があります。 この人数を考えるに当たり、養子縁組を行うことで、意図的に相続税を減少 させることを防ぐため、法定相続人の数へ算入できる養子の数については一定 の制限がされています。
イ被相続人に実子がいる場合で、養子縁組を行う
このケースでは、複数人と養子縁組を行った場合でも、法定相続人の数に算 入できる養子の数は1人だけとされています(相法15②一)。
ロ 被相続人に実子がいない場合で、養子縁組を行う
このケースでは、複数人と養子縁組を行った場合、法定相続人の数に算入で きる養子の数は2人までとされています(相法15②二)。 法定相続人の数に算入する養子の数を判断する場合に大切になるのが、「実 子」の考え方です。この実子についても特殊な取扱いがあるため、留意する必 要があります(相法15③)。
【実子とみなす人】
(イ) 特別養子縁組により被相続人の養子となった人や被相続人の配偶者の実子で 被相続人の養子となった人など
(口) 被相続人の直系卑属である代襲相続人
なお、この取扱いは、あくまでも相続税法上の法定相続人の数を考える上で のものです。仮に実子がいる場合で、複数人と養子縁組を行ったとしても、上 記(1)のとおり、そのすべての養子が養親の嫡出子であり、民法上の相続人にな ることに変わりはありません。
② 相続税額の2割加算 相続税法では、被相続人の配偶者及び一親等の法定血族以外の人については、 算出された相続税額の2割に相当する金額を加算することとされています(相 法18)。
養子は養親の嫡出子の身分を取得しますので、一親等の法定血族となります。 そのため、原則としてこの規定の適用はありません。
ただし、孫養子については、その孫が代襲して相続人となっている場合を除 き、相続税額の2割加算の対象者となるため、孫を養子にする場合には注意を 要します。
A:ご長女のお子様を養子にすることで、お孫様への相続が可能となり、財 産を守るという目的は達成できると思料します。また、ご長女のお子様を養子 に迎えることで相続税の節税が可能なケースもあります。ただし、この場合, 親族間の人間関係にも影響しますので、事前に話し合いの場を設けるなどして、 軋轢が残らないよう対応することが肝要といえます。
解説:
(1)養子縁組の効力
養子縁組を行った場合、養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得する こととされています(民法809)。養親の相続が開始した場合、養子は第1順位 の相続人となりますから、遺産分割協議へ参加し、財産を引き継ぐことができ ます。
孫を養子にすることで、一代飛ばして財産を相続させることができるため、 将来の子の相続も含めて考えると節税になるケースも考えられます。
(2)養子の子の代襲相続権
養子縁組を行った子が、養親の相続開始前に亡くなっていた場合、その養子 の子は代襲相続人になり得るのでしょうか。
養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得することとなるのは前述のと おりです。つまり、縁組前には養親との血族関係はありません。そのため、その養子の子が縁組前に生まれていた場合は、養子の子には、養親との血族関係 は生じず、養親の直系卑属に当たりませんので、代襲相続人になることはでき ません(民法887②但書)。これに対して、縁組後に養子に子が生まれた場合に は、養親と養子に血族関係が生じてから生まれた子になるため、代襲相続人と なることができます。
したがって、養子が既に亡くなっている場合で、その養子に子がいる場合には、 養子縁組の日と養子の子の出生日を確認した上で、相続人の範囲を判断します。
なお、やや例外的な事例ですが、被相続人が実子(A)の配偶者(B)と養 子縁組し、その時点で既にAとBの間に子 (被相続人の孫。C)が出生してい た場合において、被相続人の相続開始前にBが死亡した事例を考えます。この 場合、Cは、被相続人とBの養子縁組前に出生した子であるため、Bを代襲相 続しないかのようにも思えます。しかし、Cは、Aの子として被相続人の直系 卑属であるため、CはBの代襲相続人となると解されています。
(3)相続税計算上の留意点
① 法定相続人の数への算入制限
相続税を計算する上では、基礎控除額の計算など、相続人の人数が重要とな る規定(前記3(4)②参照)があります。これらの規定を適用する上では、相続 税法上の相続人が誰か、その相続人の人数は何人かを考える必要があります。 この人数を考えるに当たり、養子縁組を行うことで、意図的に相続税を減少 させることを防ぐため、法定相続人の数へ算入できる養子の数については一定 の制限がされています。
イ被相続人に実子がいる場合で、養子縁組を行う
このケースでは、複数人と養子縁組を行った場合でも、法定相続人の数に算 入できる養子の数は1人だけとされています(相法15②一)。
ロ 被相続人に実子がいない場合で、養子縁組を行う
このケースでは、複数人と養子縁組を行った場合、法定相続人の数に算入で きる養子の数は2人までとされています(相法15②二)。 法定相続人の数に算入する養子の数を判断する場合に大切になるのが、「実 子」の考え方です。この実子についても特殊な取扱いがあるため、留意する必 要があります(相法15③)。
【実子とみなす人】
(イ) 特別養子縁組により被相続人の養子となった人や被相続人の配偶者の実子で 被相続人の養子となった人など
(口) 被相続人の直系卑属である代襲相続人
なお、この取扱いは、あくまでも相続税法上の法定相続人の数を考える上で のものです。仮に実子がいる場合で、複数人と養子縁組を行ったとしても、上 記(1)のとおり、そのすべての養子が養親の嫡出子であり、民法上の相続人にな ることに変わりはありません。
② 相続税額の2割加算 相続税法では、被相続人の配偶者及び一親等の法定血族以外の人については、 算出された相続税額の2割に相当する金額を加算することとされています(相 法18)。
養子は養親の嫡出子の身分を取得しますので、一親等の法定血族となります。 そのため、原則としてこの規定の適用はありません。
ただし、孫養子については、その孫が代襲して相続人となっている場合を除 き、相続税額の2割加算の対象者となるため、孫を養子にする場合には注意を 要します。