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探偵の知識

遺産分割協議中の二次相続

2025年11月19日

Q&A 弁護士のための相続税務70
中央経済社

Q: 父が亡くなり、相続人である母(配偶者)と長女の私の2人で相続税の申告の準備を進めていたところ、申告期限を待たずして母も亡くなりました。遺産分割も済んでいません。
A: 相続人が遺産分割協議の前に死亡した場合には、その死亡した人の相続人が代わりに遺産分割協議に参加することとなりますが、本事例では、もしお母様(配偶者)の相続人があなた (長女)のみである場合には、存命の相続人が1名のみであることから、もはや遺産分割協議を行う余地はなく、お父様の相続については未分割として相続税申告を行います。
解説
(1) 相続税の申告手続への影響
相続税申告書を提出すべき人が、その申告書を提出しないで死亡した場合には、その人の相続人は、その相続開始を知った日の翌日から10か月以内に、その死亡した人の申告書を提出する必要があります(相法27②)。 相続人がその死亡した人の申告義務を承継し、一次相続 (本件父の相続)の相続税申告を行うこととなりますが、その申告期限は二次相続(本件母の相続)から10か月以内です。しかし、一次相続における母の申告期限が延びるのみであり、他の相続人の申告期限は延びませんから、共同相続人全員で一つの相続税申告書を提出する場合には、一次相続の元々の申告期限までに申告を行わなければなりません。

(2) 協議中に二次相続が発生した場合の配偶者に対する相続税額の軽減の適用可否
協議中に相続人である配偶者が死亡して二次相続が発生した場合において、一次相続により取得した財産の全部又は一部が、一次相続に係る配偶者以外の共同相続人又は包括受遺者及びその配偶者の死亡に基づく相続に係る共同相続人又は包括受遺者によって分割され、その分割によりその配偶者の取得した財産として確定されたものがあるときは、配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けることが可能です(相基通19の2-5)。また、分割協議により確定した分割内容をもって、一次相続の相続税申告を行うこととなります。 二次相続における相続税申告上は、分割により配偶者が取得した財産として確定された財産の価額を、配偶者固有の財産の価額に加算し、二次相続の相続税額を計算します。
(3) 配偶者の死亡により共同相続人が1名のみとなった場合
一次相続が未分割のまま、共同相続人の死亡により、存命の相続人が1名のみとなった場合には、1人で遺産分割協議を行う余地はなく、一次相続については、未分割であるものとして相続税申告を行うこととなります。配偶者に対する相続税額の軽減の適用はなく、法定相続分で財産を取得したものとして(相法55),申告します。なお、遺産分割協議は口頭でも成立するため、遺産分割協議書の作成はしていなかったものの、二次相続の発生前に口頭で遺産分割協議が成立していたような場合には、「遺産分割協議証明書」を作成することにより、その分割内容に基づく相続手続が可能であると考えます。
二次相続における相続税申告上は、一次相続における配偶者の法定相続分によって計算した財産の価額を配偶者固有の財産の価額に加算し、二次相続の相続税額を計算します。この場合、配偶者に対する相続税額の軽減の適用がないことから、相続税の納付が生じる可能性がありますが、この納税については、二次相続における相続税申告上、債務控除及び相次相続控除の適用があることに留意します。