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探偵の知識

私の不倫を撮影してください

2025年11月19日

事件はラブホで起きている
探偵小沢

「36歳の女です、小沢さんに依頼がしたくてDMしました。私は今現在、不倫をしているんですが、不倫相手と私が仲良く一緒にホテルへ入っていくところを撮影してくれませんか?」
「なんじゃそりゃ? すかさず「え、そんな証拠を撮ったいったい、何に使うんですか?」と尋ねると、彼女からこんな答えが返ってきた。
「別れたいんです。不倫相手と。でも彼、どうしても別れてくれないんです」
彼女は既婚者で相手の男性も既婚者。いわゆるダブル不倫の関係。彼女自身は、もう関係を終わらせたい。でも、不倫相手の男が別れを受け入れてくれない。「君をこんなに愛してるのに」「裏切るなんて許さない」「不倫は共犯だ」「絶対バレないから大丈夫だ」――そんな言葉を浴びせてくる、なかなか手強いタイプらしい。穏便に別れることは難しいと判断した彼女はこう考えた。
「旦那にバレた、という外部要因を演出しよう」
そのために、僕に証拠映像を撮ってほしいという依頼――要するに、不倫の現場を僕が撮影し、あたかもその証拠を「旦那が探偵に依頼して撮った証拠」のように見せかける。彼女はそれを不倫相手にチラ見せし、涙ながらにこう言う。
「私はあなたとの関係を続けたかった……でも、旦那にあなたの不倫の証拠を撮られてしまったの。旦那は激怒していたけれど、『子どもたちを巻き込みたくない』って。だから、もしあなたに今後会わないって約束できるなら、慰謝料は請求しないって言ってくれたの……お願い、私と別れて……あなたもこれ以上おおごとになって、家庭を壊したくないでしょ」
なるほど。筋は通っている……いや、通っているのか……?
普段は「この人のためなら」と感情移入ができるかどうかが依頼を受けるかの判断基準になる。だけどそれとは別に、内容があまりに面白すぎるとつい受けてしまうこともある(仕事選べよ)。
「……実に興味深い依頼ですね。お受けけしましょう」
「ありがとうございます! 普段私たちはラブホテルは使わずに、シティホテルのデイユースプランを利用してます。お昼に待ち合わせて一緒にランチを食べてからホテルに入り、夕方になったら別々に部屋を出て解散といううのがルーチンなんです。ランチデートの様子も撮影してほしいです」