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探偵の知識

プリンをふたつ買った奥さん

2025年11月19日

事件はラブホで起きている
探偵小沢

奥さんは別居先の最寄り駅で降りた。
依頼者である旦那さんから事前に奥さんの別居先の住所はもらっていた。事前情報どおりの帰宅ルートである。
駅を出た奥さんは駅前の商店街へ入っていった。歩く速度や目線などから、特に明確な目的があるようには思えず、ふらふらと歩きながら気になった店に立ち寄っているような印象だった。
まずは、洋品店でヒートテックを買った。次にドラッグストアで入浴剤を買い、最後にコンビニでプリンをふたつ買った。誰かと待ち合わせをする様子もなく、そのままとりで別居先へ帰っていった。
奥さんが帰宅する直前、僕は別居先の部屋の明かりを確認しておいた。どの部屋も真っ暗。つまり、浮気相手の男がすでに在宅して帰りを待っている状況でもなさそうだった。奥さんが帰宅した時刻は19時ごろ。
(今日のところは、空振りか……いや、待てよ……?)

奥さんは、たしかにプリンをふたつ買っていた。もしかしたらこのあと、浮気相手の男が現れて、部屋に入っていくかもしれない。それに、しばらくしたら奥さんが着替えて、浮気相手の男に会いに出掛けるパターンだってあり得る。
これまでの調査状況を上司に伝えて相談した結果、「終電がなくなる時間まで様子を見よう」ということになり、張り込みを継続した。
それから数時間、別居先を張り込んで監視したけど、特に怪しい動きはなかった。誰かが部屋に入っていくこともなければ、奥さんが出掛けることもなかった。
深夜1時ごろには、張り込みが終了したと記憶している。その時間でも、奥さんの部屋の明かりは灯っていた。僕はタクシーを捕まえて自宅へ帰った。ベッドに入ったのは、なんだかんだで明け方ごろだった。