探偵の知識

組織体制の闇

2025年11月19日

事件はラブホで起きている
探偵小沢

僕も実際に大手の探偵社で働いてみたけど、組織体制にも問題があると思った。
会社というのは、役割分担することで効率的に機能する。社長がいて、総務部、営業部、相談部、調査部、広報宣伝部、映像編集部……それぞれに部長や一般社員がいる。探偵社も一般的な企業と同様の〝縦割り〟の組織一体制だった。
だけど、探偵業と縦割りの組織は、致命的なまでに相性が悪い。浮気調査というのは一件一件がまったくの別物だし、依頼の背景も目的も、抱えている事情も千差万別。だから、型どおりの対応やマニュアルだけでこなせるような業務じゃない。何よりも、調査の命運を分けるのは、ちょっとした情報の行き違いや判断のズレだったりする。
さらに、浮気調査の現場では常に予測不能な事態が起きまくる。だからこそ、依頼者と密に連携を取りながら進めることが不可欠だし、突発的な動きに対しても瞬時に判断して臨機応変に対応する柔軟性が要求される。現場では、たった1〜2秒の判断が調査の勝敗を左右する。だけど、現実の探偵社では、業務が細分化されている。依頼者から話を聞く人間、契約を交わす人間、調査方針を決める人間、現場を編成指揮する人間、実際に調査をする人間、調査報告書を作成する人間、結果を依頼者に報告する人間……といったように業務によって担当する人間がバラバラ。
この組織体制がもたらすデメリットは、ある程度の規模を誇る探偵社に依頼をしたことのある人間にしかわからないと思うから、僕のフォロワーの方が、過去にこんなDMをくれたので、紹介したい(もちろん本人に掲載許可は取ってある)。

「旦那の不倫を疑い、頭が混乱した状態でネットで見つけた〇〇探偵事務所に相談し、勢いで20時間80万円の契約をしてしまいました。不信感が強く本当に嫌な気持ちになった探偵社でした。一応、最低限の証拠は撮れていたので、年始早々寒い現場で頑張っていただいた探偵の方には感謝しかありません。それだけにはやり会社の体制が本当に残念だなと思いました。
依頼は前日の15時までに希望を出すのですが、やり取りができるのがカウンセラーのみで、調査の進捗状況を一切教えてもらえません。そのカウンセラーは毎朝連絡をくれるのですが、内容はその日に天気についてです。私は心の中でその人のことをアレクサと呼んでました。予定が変わって旦那が少し早く家を出ることを知らされたかったのに、調査班の方にはこちらからは直接連絡できないですし、アレクサからはずっと返事が来ませんでした。即日対応可能といいながら、結局即日での対応はしてくれませんでしたし、その日に調査をしていなかったことも最後の報告の際に知りました。
浮気相手の女の家に入ったところで調査が終わっている日もあって、私は出て来るところまで調査をして欲しかったのですが、なぜかそこで調査が終わって、3時間だったはずなのに6時間分消費されたことになってました。依頼してからの二カ月もの間、調査が上手くいってるかどうかの途中経過報告もなく、ほんとバカにされてると思いました。
不倫の苦しみと同じくらい探偵事務所とのやり取りにはストレスを感じていました。」

探偵社の組織体制へのストレスを愚痴った内容や、「本当に探偵社あるあるだよなぁ……」と心から共感できる。調査現場に必要な情報が降りてこない、一刻を争う事態なのに依頼者への確認や会社の許可取りに時間がかかる……そんな歯がゆい思いをしながら、僕も仕事してたなぁ(遠い目)。
探偵業こそ、依頼者それぞれの要望に沿った、きめ細やかなオーダーメイド的な対応が必要。そして何より、顔も知らない依頼者の苦しみは、なかなか現場には伝わりにくい。だからこそ、依頼者の動向や想いを調査に関わる人間全員が共有しなければ、調査はどうしても「流れ作業」になってしまう。