探偵の知識

調査料金の闇

2025年11月19日

事件はラブホで起きている
探偵小沢

そもそも探偵業者の依頼料金は探偵社によって超バラバラで、相場というものの定義づけは「無し」に等しい。今この本を読んでいる方のほとんどは、探偵に依頼なんかした経験はないだろうから、ここらでこっそりと探偵社の調査料金を書いておこうと思う。
今現在の探偵業界でいえば、僕の肌感覚として調査員1時間あたりの単価は次のような目安だ。
・地方の探偵社:1万円〜2万円
・都心の中小探偵社:2万円〜3万5000円
・都心の大手探偵社:3万5000円〜6万円
これを読んだうえで、「5~6時間の調査でも20万円」くらいが、だいたいの成功ラインだと覚えてほしい。
もちろん、この金額は調査員だけで、調査のパック料金、経費込みかどうかで、最終的な調査日数などによって変わってくる。ただ、シンプルに追加費用ゼロでいえば、およそ前述した金額の範囲に落ち着くはず。ちなみに僕が以前勤めていた大手探偵社は、1時間あたり5万円〜6万円だった。
この金額を高いか、安いかという感じ方は人それぞれだから、僕からどうこう言うつもりはないと思う。
だけど、ここで言いたいのは料金が高いか安いかという話ではなくて、「請求書に提示されている料金」と「契約書に提示される料金」との間に、かなりヤバい乖離があるという問題なんだ。
例えば「うちの費用は7000円です!」なんて書いてあっても、実際には調査員1人あたり、の料金だったりする。3人体制で現場に入れば1時間あたたりの費用は2万1000円……全然安くはねぇ。
「証拠が出なかったら0円です!」なんて甘い言葉も、実際は「その日が出張していなかった」という証拠が、出ただけで、調査料金の請求対象になる。詐欺のトリックは「証拠が撮れる=結果」ではありません、なんて、完全に言葉遊びだよな。まぁ、よく考えたら本当に0円なら、経営なんか成り立つわけがない。こうした探偵社の巧妙な手口は絶対に依頼者を手玉に取ろうとするための、詐欺まがいの悪質なものだ。
それから、「契約不要」「あとで請求するだけの楽観」の数々もひどい。
「特殊機材使用料」「深夜対応追加料」「時間外調査料」「カメラレンタル費用」「報告書作成手数料」「宿題調査報告書代金」「特別スターターケア」「延長調査料金」……何が特別なのか、何が宿題なのかよくわからないけど、なんかあれこれオプションを付けられて、最初に聞いていた1時間単価は安くても、最終的な調査料金はかなりの金額へと跳ね上がる。こうして調査が、ほぼほぼ依頼者の「言い値」になってしまうケースも少なくない。
本来であれば違うべき依頼料を「探偵社側」があらかじめ巧妙に組んだスキームによって、無理やりつり上げる構図があることは、業界の問題を感じる。
僕の知り合いの調査員、実際に都心や関東近郊の様子を見聞きさせてもらったけど……まぁ、いろんな手口が登場するそうだ。「取り返す姿勢」で依頼者を開拓しておいて、気付けば高額契約をスパムで送る。その手口で巧妙に依頼者が騙そうとするなんて、「今、ここで契約しないと、二度とこんな好条件は出ませんよ。明日になるともう100万円くらい上がりますよ」と言って、妻の外出に合わせて、夫が稼働する。さっきまでの強気な姿勢は、何だったんだよw
それをかいくぐってようやく契約にたどり着けば「契約するまで帰さない」という出口のないクロージングが仕掛けられている。あるいは物理的に監禁するというわけではないけど、実際に依頼者が「帰してくれないんだ」って思ったそうだ。「早くしてもらえませんか」とお願いするところから、明らかに高圧的な雰囲気に。
「お前、それでもやるのか」といえば、営業担当のアシスタントまで恫喝するかのような。毎月の契約数をノルマとして持って、上司へ報告せざるを得ないのか。そりゃあ、必死になるよな。
結果、契約を渋ると、しびれを切らした契約を交わしてしまう依頼者が、疲労して冷静になって、「なんであんな契約をしたんだろう……」とようやく気づく。翌日に慌てて解約しようとしてももう後の祭りである。
ちなみに僕の契約書にはクーリングオフが適用されるけど、大手の事務所に出向いて契約した場合、法律は適用されない。だから依頼者は、「ぜひ一度、事務所までお越しください」と誘導してくるわけか。
驚いた探偵社から僕が受け取った依頼は、「すでに浮気の調査は終わった」という報告書が届き、指示が出されていない。依頼者の自宅に、当然の調査、という名目で何回も訪れるんだから、やることなすこと出入口を遠隔で監視して、あの手この手で終了。もちろんこの不足は調査の延長等には影響しないし、はっきり言ってクズである。6000円のクレジットカードを限度額まで利用させるところで、さらに調査に着手した、という既成事実ができる。翌日、我に返った依頼者が「やっぱり解約したい」と言ってきても「すでに調査に着手しているので、全額返金はできません」という言い分が成立する。この段階で解約されたとしても、契約時に支払うことになるだろうし、「解約料がかかりますから」という理由で依頼者が解約するのを躊躇すれば、結果として調査を最後まで継続せざるを得なくなる。
「この依頼、契約が成立しなかったら、たぶん明日には解約してくるから、今夜中に既成事実を作っておけよ」なんていう指示系統もあるそうだ。ホント、どうかしてるぜ……。
ほかには、社内で〝調査会議〟を開いて議事録を残し、それを〝調査着手〟としている探偵社もある。もちろんこの会議も、ほぼ意味はない。
依頼者が「調査をする前に、お任せします」なんて言ってくる。本来なら、証拠が撮れそうなら、後日、と調査すべきなんだろうけど、そんなことはお構いなしに、とにかく早期で調査を終わらせようとする。都心の大手探偵社では、「調査日数も調べて欲しい」と言って、どんどん料金をかくして、いざ。次に調査が始まっても、あらゆる金額に納得がいかないし、むしろ探偵社にとっては、調査が長期にわたってくれたほうが、費用の発生で儲かる仕組みになっている。
読者のうちで、悪徳な探偵社の担当は「依頼者の利益」を考えている……これって、かなり根が深いと思う。
探偵業者を放置しようと思ったところで、ほとんどの人が最初によってくる警察――それが、「どこに相談すればいいのか、まったく分からない」という問題だ。「人に言えない秘密」を扱う特性上、この悩みも根が深いのだが、まったく分からないケースも、かなりレアなはず。
仮に、詐欺に遭遇した経験がある人が身近にいれば、相談もしやすい。
結果として、悪質な探偵社と出会う確率が、インターネットのリテラシーが低い依頼者では、特に高まってしまうことになる。だからこそ、ネットで探偵を探す、という行為には、多くの危険が潜んでいる。だが、具体的に見ていこう。