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探偵の知識

新卒で某大手探偵社に就職

2025年11月19日

事件はラブホで起きている
探偵小沢

新卒で某大手探偵社に就職、新人探偵となった僕を待ち受けていたのは、刺激に満ちた世界だった。当時、その探偵社には非常に多くの調査依頼が舞い込んできており、毎日が浮気調査のエレクトリカルパレード状態。現場から次の現場へと休む間もなく駆けずり回り、尾行、張り込み、ラブホ撮影――スケジュール帳は常に真っ黒。ちなみに、担当した依頼の9割はクロだった。
朝から翌朝まで仕事をさせるような超ブラック企業だったけど、まだ20代前半の若かりしころの新人探偵小沢は、目を輝かせながら他人のセックスを証明し続けていた。
「気づかれないように尾行し、ラブホに入る瞬間を撮影し、浮気相手の自宅を突き止め、そして合法的に人の秘密を覗き見ることができる……こんなゲームのような楽しいことをしながらお給料がもらえる仕事なんて最高じゃないか!」
心の底からそう感じていた。というか、今でもその感覚は変わらないけれどね。
正直に言うと、今まで僕は探偵の仕事を「仕事だ」と思ったことがない。今も昔も、たまたま自分が好きで得意なこと(小学生のころからw)を楽しみながらやっているだけの話で、お金までもらえることを不思議に思ったりもする。世間ではそれを「天職」と呼ぶのかもしれないけど。
そんな探偵社での恐怖の毎日は、今思えば青春だった。何者でもなかった若者が「探偵」という肩書を得て、自分の居場所を手に入れた。「好きこそ物の上手なれ」のことわざのとおり、新人探偵小沢はメキメキと実力をつけていった。
だけど、そんな青春時代も、入社して数年が経ったころには終わりを迎えることになる。
調査スキルもひと通り身についてきたころ、僕は気づいてしまった――自分がいる探偵業界そのものが、「とんでもない闇」を抱えていることに。
探偵社が掲げている「依頼人のために証拠を撮る」という看板は、あくまでも表向きのものに過ぎなかった……。