伝家の宝刀「Amazonギフトカード」
2025年11月19日
事件はラブホで起きている
探偵小沢
聞き込む相手は、時間に余裕のありそうな人物がベスト。買い物帰りの主婦、庭でたたずんでいるおばあちゃん、犬の散歩をしているおじいちゃんなんかが狙い目だ。聞き込みするときは、家のピンポンはあんまり押したくない。できるだけ自然に、ご近所さんの懐にフッと入っていくような感じで、住民のみなさんに怪しまれないような雰囲気、表情、声色を微調整しながら声をかけていく。
「あの……すみません。僕、小沢といいまして今日は東京の方から来ましてですね、あそこの家の斎藤さん、ご存知ですか?」みたいな感じだ。第一印象がとにかく命。自然な形で、下手に出て物腰の柔らかさを全面に出す。
場合によっては免許証を見せて警戒心を解いたり、商品券なんか配っているような感じで、たくさんのお世辞をチラつかせたりして興味を引きながら会話を成立させていく。
「あの僕、弟がいまして、あそこに住んでる娘さん、斎藤かおるさんっていうんですけど、その娘さんと僕の弟のほうで、実は縁談の話が進んでまして。で、なんか弟いわく、どうやらそのかおるさんの幼少期の家庭環境がものすごく悪かったみたいな話があったらしくて……そこで兄である僕がですね、なんていうかお節介で、勝手にこっそり今日来て、こうしてご近所にお話をお聞きして回ってるんですよ」
という感じで説明すると、「あーなるほどね」みたいに割と納得してくれます。
「実は弟、一度離婚を経験してて……それで僕もちょっと心配性なもんでして、ハハ……」と、弟思いのお兄ちゃん感を出すと、さらに好感度はアップする。
このようにして、何かしらの情報をちょっとでも引き出すことができたら、「あ、そうだとこれ、気持ちだけ受け取ってください」と言って差し出すのが伝家の宝刀である。
そう、「Amazonギフトカード」。人はみな、Amazonギフトカードの前では無力なのだ。
ギフトカードを受け取った途端に協力的な態度になる人は多いし、嬉しそうにペラペラしゃべってくれる主婦に、僕は毎回興奮する。
もちろん中には謝礼を絶対に受け取らない人もいるんだけど、そういう人って、受け取らないで最初に話をしてあげている自分に対して陶酔している面もあるので、謝礼を断ってからのほうがかえって気分が良くなって饒舌になるんですよね。
それと、正確情報を引き出すには反論させること。人間は無意識に自分の持っている知識を誰かが話したがっているので、わざわざ間違った情報を口にすると、訂正しながら、正確な情報をしゃべってくれたりする。コツとしては相手に意見や情報をぶつけるというより、つぶやく感じで間違えるといいと思うよ。聞き込みでも日常生活でも使えるテクニックだね。
ひと通り情報を手に入れたあとは、「今日はお話を聞かせてくれてありがとうございました。おかげさまで僕も安心できました。あ、そうだ今日の話、まだ縁談の途中なので、すいませんがしばらくは斎藤さんには内密にしていただけますか? 僕がお節介で聞いて回っていたなんてことが知れたら、すごく気まずくなっちゃうんで……」
などと口留めをお願いすると、「あー、はいはい。そりゃ内々の話だもんね。大丈夫、言いませんよ」みたいに言ってくれる。秘密を共有して親切心にづけ込もう。
とまぁ、紹介したのはあくまで一例だが、こういった感じで探偵は状況に応じて適切な聞き込みをして、依頼者の欲しがる情報をこっそり入手するのだ。
いかがだっただろうか。
「尾行」「張り込み」「聞き込み」という3つの探偵スキルについて、簡単に紹介させてもらった。
現実世界の探偵が実際にやっている実務内容が、なんとなくイメージできたんじゃないかと思う。フィクションとは違って、ずいぶん地味に映るかもしれない。だけど、日夜探偵の仕事をしている僕が言えるたしかなことは、フィクションの世界の探偵よりも、現実世界の探偵がやっている尾行・張り込み・聞き込みのほうが、よっぽど刺激的で面白いということ。
だって、やらせなしのドロドロの人間ドラマや人間の怖さを最前席、しかもVIP席で見れるんだからね。
「あの……すみません。僕、小沢といいまして今日は東京の方から来ましてですね、あそこの家の斎藤さん、ご存知ですか?」みたいな感じだ。第一印象がとにかく命。自然な形で、下手に出て物腰の柔らかさを全面に出す。
場合によっては免許証を見せて警戒心を解いたり、商品券なんか配っているような感じで、たくさんのお世辞をチラつかせたりして興味を引きながら会話を成立させていく。
「あの僕、弟がいまして、あそこに住んでる娘さん、斎藤かおるさんっていうんですけど、その娘さんと僕の弟のほうで、実は縁談の話が進んでまして。で、なんか弟いわく、どうやらそのかおるさんの幼少期の家庭環境がものすごく悪かったみたいな話があったらしくて……そこで兄である僕がですね、なんていうかお節介で、勝手にこっそり今日来て、こうしてご近所にお話をお聞きして回ってるんですよ」
という感じで説明すると、「あーなるほどね」みたいに割と納得してくれます。
「実は弟、一度離婚を経験してて……それで僕もちょっと心配性なもんでして、ハハ……」と、弟思いのお兄ちゃん感を出すと、さらに好感度はアップする。
このようにして、何かしらの情報をちょっとでも引き出すことができたら、「あ、そうだとこれ、気持ちだけ受け取ってください」と言って差し出すのが伝家の宝刀である。
そう、「Amazonギフトカード」。人はみな、Amazonギフトカードの前では無力なのだ。
ギフトカードを受け取った途端に協力的な態度になる人は多いし、嬉しそうにペラペラしゃべってくれる主婦に、僕は毎回興奮する。
もちろん中には謝礼を絶対に受け取らない人もいるんだけど、そういう人って、受け取らないで最初に話をしてあげている自分に対して陶酔している面もあるので、謝礼を断ってからのほうがかえって気分が良くなって饒舌になるんですよね。
それと、正確情報を引き出すには反論させること。人間は無意識に自分の持っている知識を誰かが話したがっているので、わざわざ間違った情報を口にすると、訂正しながら、正確な情報をしゃべってくれたりする。コツとしては相手に意見や情報をぶつけるというより、つぶやく感じで間違えるといいと思うよ。聞き込みでも日常生活でも使えるテクニックだね。
ひと通り情報を手に入れたあとは、「今日はお話を聞かせてくれてありがとうございました。おかげさまで僕も安心できました。あ、そうだ今日の話、まだ縁談の途中なので、すいませんがしばらくは斎藤さんには内密にしていただけますか? 僕がお節介で聞いて回っていたなんてことが知れたら、すごく気まずくなっちゃうんで……」
などと口留めをお願いすると、「あー、はいはい。そりゃ内々の話だもんね。大丈夫、言いませんよ」みたいに言ってくれる。秘密を共有して親切心にづけ込もう。
とまぁ、紹介したのはあくまで一例だが、こういった感じで探偵は状況に応じて適切な聞き込みをして、依頼者の欲しがる情報をこっそり入手するのだ。
いかがだっただろうか。
「尾行」「張り込み」「聞き込み」という3つの探偵スキルについて、簡単に紹介させてもらった。
現実世界の探偵が実際にやっている実務内容が、なんとなくイメージできたんじゃないかと思う。フィクションとは違って、ずいぶん地味に映るかもしれない。だけど、日夜探偵の仕事をしている僕が言えるたしかなことは、フィクションの世界の探偵よりも、現実世界の探偵がやっている尾行・張り込み・聞き込みのほうが、よっぽど刺激的で面白いということ。
だって、やらせなしのドロドロの人間ドラマや人間の怖さを最前席、しかもVIP席で見れるんだからね。