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探偵の知識

ゴミからばれた営業マンの浮気

2025年11月19日

図解 秘探偵・調査マニュアル
渡邉 直美

がもっとも苦手としている調査はガーボロジー。つまり、対象者が出したゴミの調査。文字通り汚れ仕事だが、そこから得られる情報は恐ろしく多い。たとえば、レシートやカードの明細書などは必ず出てくるし、ときには銀行の残高照会のレシートや給与明細が出てくることもあるから、対象者の生活水準や借金の有無などがきわめて正確にわかる。
また、対象者が男性なら、コンドームの有無で付き合っている女性がいるかどうかわかるし、女性の場合には生理日まで簡単にわかってしまう。
苦手だといっても、依頼されたらもちろんやらざるを得ない。先日もそんな依頼があった。依頼者は36歳の主婦。夫が愛人のマンションに出入りしているのはわかっているのだが、「営業なんだから、色々なマンションに出入りするのは当たり前。しかも、そこのマンションには取引先の会社が入っているんだ」といいわけされてしまう。たしかに、確認してみるとそのマンションにはいくつか会社も入っているし、入り口がオートロックということで、主人をつけていくこともできない。
しかし、女の部屋から出てくるゴミを見れば、夫がその女と浮気しているかどうかがわかるはず”というのだ。
実はこの夫(対象者)、肌が弱いらしく、コンビニやホテルで手軽に手に入るコンドームは装着できず、ある特定のメーカーの特定の商品しか使用していないのだという。また、セックスした後に特定の栄養ドリンクを必ず飲むというヘンな癖もあるという。さらに、吸っているタバコはマルボロで、吸い口をかむ癖があるという。つまり、愛人と思わしき女の部屋から出てきたゴミにこれらが入っていたら、クロというわけだ。依頼者は、この3点セットが出てきたら、DNA鑑定をしてもいいと、スゴい張り切りよう。
早速、調査を開始すると、たしかに対象者はアヤしい。仕事が不規則な営業であることをいいことに、帰はほとんど毎日午前様。日曜祭日も外出だ。そして、尾行していくとたしかに例のマンションへ頻繁に通っている。部屋を特定し、そこから出されたゴミを定期的に回収して調査した結果は・・・・・・。
①コンドームが週2回のペースで出てきた。メーカー、袋の破り方、捨てるときの縛り方などすべて依頼者の言っていたとおり。
②マルボロの吸い殻が多数。吸い口にはかんだ後がしっかりとついていた。
③依頼者が言っていたメーカーのドリンク剤のビンが数本。以上のことから、対象者はこの女性と浮気していることは確実。
④スーパーのレシートや生ゴミの内容、3万円のスーツを10回払いで買っていることをあらわしているカードの明細などから、この部屋に住む女性が、ギリギリでつつましく暮らしていることがわかった。それは、銀行の残高が30万円ほどしかないことからもわかる。
⑤「田舎へ戻ってきて、お見合いでもして早く家をついでほしい」という内容の手紙。
実家の母親から送られてきたようで、実家の住所も判明。
女性の実家はかなりしっかりしたところのようだ。
この調査結果を依頼者に報告したところ、コンドームの件については怒っていたものの、実家からの手紙やカード明細などを見ていくうちに、元気がなくなってしまった。憎い夫の浮気相手と思っていた女性が、実家から遠く離れた東京でつつましく1人暮ししていることを哀れに思ったようだ。
カーボロジーは、なぜかいつも意外な結末をもたらすのだ・・・・・・。