探偵の知識

恐怖!妻の報復

2025年11月19日

図解 秘探偵・調査マニュアル
渡邉 直美

事務所に訪れた依頼者(主婦・40歳)は、落ち着いた声で「私の主人が今日から
1週間の間に何をするのか見届けてほしいんです」というちょっと不思議な依頼を持ち込んできた。「もう少し詳しくお願いします」と言ったところ、彼女はすごいことをしゃべりだした。「今まで、主人は何十回と浮気をしてきました。その度にカミソリを持ってヤメるように迫ったんです。はい、いつもそれで止めたようでした。でも、今回は違ったんです。なにも白状しないんです。ですから、寝ている主人の両手両足を縛り上げて、身動きがとれなくしたうえで、「白状しないと、カミソリを入れたコンドームをあそこに被せるわよ』って脅したんです。もちろん、本気でした。ちゃんと右手にはカミソリ入りのコンドームを持ってましたから。そうしたら主人、戻を流しながら「お願いだから1週間待ってくれ」って言うんです。
で、とりあえず1週間待ってあげることにしたんです。でも、この1週間の間に主人がなにをするのかどうしても知りたいんです・・・・・・」落ち着いていたように見えた
依頼者の目は、よーく見ると完全にイッていた。
早速、私は調査を開始した。翌日、早速対象者は動いた。深夜、公園の中で若い女性となにやら深刻そうに話をしている。しかし、人通りがないため、あまり近づくことができず、話の内容までは掴むことができない。その翌日、また対象者は同じ場所で女性に会った。そして、その翌日にも…・・・・。よほど重要な話のようだ。もしかしたら別れ話を持ち出しているのか?
それから3日後、会社を抜け出した対象者は、なんと産婦人科へ入っていった。
1時間ほどすると、対象者は入ったときと同じように1人で出ていった。産婦人科に行っていると言うことは・・・・・・考えを巡らしていると、先日公園で対象者と会っていた女性が産婦人科から出てきたではないか!!私は、急いで彼女に近づき、何気なくぶつかった。
「あっ、ごめんなさい。大丈夫でした?」「ええ、大丈夫です」
「お子さんですか?私もここ(産婦人科)に通っているんですよ。妊娠3か月なんです。そちらは何か月ですか?」「4ヵ月なんですよ」(!!)公園で目撃したときにはコートを着ていたため、まったくおなかの膨らみには気がつかなかったが、妊娠していることを本人から聞き出すことに成功した瞬間だった。つまり対象者は、奥さんに約束した1週間以内に、この女性に子供をおろすよう説得するつもりだったのだ。
数日後、私は依頼者に調査結果を報告した。彼女は私の報告を聞きながら、ギュッと手を握り締めた。すると、その手からダラダラと真っ赤な血が流れ始めたのだ。
「どうしたんですか!!」私は、すぐに彼女の手を開かせた。すると、そこにはカミソリの刃が・・・・・。私は、すぐに救急車を呼び、彼女を病院まで送り届けた。
後味の悪い調査だった。しかし、さらに事態は恐るべき方向へと進んでいった。
なんと、依頼者が浮気相手の女性のことをマンションの階段から突き落とすという事件が起きてしまったのだ。女性は軽い打撲で済んだものの、お腹の子供は......。
幸い、浮気相手の女性も、犯行の動機が動機なので示談に応じ、奥さんは実刑を受けずに済んだのだった。普通、このようなトラブルを起こしてしまうと、離婚してしまう夫婦が多いのだが、彼らは違った。なぜなら、示談の条件に”こんな事件が起きたのも、ご主人が奥さんを大切にせず、浮気なんかしたから。これからは夫婦仲良く暮らし、決して離婚しないこと”という妙な一項目が入っていたから。不倫相手だった女性の、彼に対するせいいっぱいの復讐だったのかもしれない。
これに懲りて、旦那さんの病気が治ってくれるといいのだが…....。