変装のテクニック
2025年11月19日
図解 秘探偵・調査マニュアル
渡邉 直美
変装というのは、それ自体は調査活動ではないが、張り込み、尾行、聞き込みなど、どんな調査でもしばしば必要になる重要なテクニックである。対象者に気づかれないように風景に溶け込むため、情報提供者たちの口を軽くするためには、かせないテクニックなのである。
調査が長期戦になればなるほど、変装のテクニックがものをいう。それだけ周囲の目にさらされるからで、いつも同じ変装というわけにはいかなくなってくる。最低でも4パターンのバリエーションをもっていなければならない。ブルーカラー、ホワイトカラー、マスコミ風、宅配業者など、できるだけ広範囲にレパートリーをもっておくと、どんなシチュエーションでも対応しやすい。
当然、ファッションや職業についての広い知識が必要になる。とりわけ、ファッションについては、調査報告書を作成する際にも、細かな分類をして克明に記述しなければならないという必要性があるので、是非とも勉強しておきたいところ。もっとも、探偵は観察眼が生命線なのだから、街を歩いていて、どのような層の人間がどのような格好をしているのか、ということに疎いようでは、あまり適性がないと考えられる。
もうひとつ、変装について注意しなければならないことがある。それは、目立つてはいけないということだ。言い換えれば、印象の強い探偵というのは、あまり優秀ではないということだ。"採偵は名優たれ”という格言があるが、変装について、俳優との最大の点は(俳優の場合は変装とはいわないが)、存在感を薄めるということだ。元のイメージからガラッと変わっていても、人目をひいてしまう変装はNGなのである。
では、実際に、どのように変装をすればよいのかについて、上から順に説明していくことにしよう。まずは頭。ヘアスタイルというのは大きくイメージを変えるもの。なおかつ手軽に変化させることができるので、常日頃から自分であれこれ試しておくといい。
たとえば、朝、セットしないで手櫛だけで済ませて自然な感じにしてみたり、ポリュームアップするシャンプーを使ってみるだけでも、ずいぶんといろいろバリエーションができるはず。尾行の際に整髪剤を携帯しておけば、簡単に変装することができるのでオススメである。あと便利なのは白髪スプレー。あっというまに初老の人間に変装できてしまう。自分の実年齢にとらわれず、不自然ではないかぎり、いろいろなキャラクターに化けることはたいせつ。ときには性別だって無視してもいい。あくまでも、不自然でなければ”という大前提があるが。
また、帽子などの小道具も上手に使いこなせるようになっておこう。ひと昔前に比べ、若年層でのキャップの愛用が増えているが、探偵にとっては好都合。帽子をかぶっていることによって目立ってしまうのでは困る。抵抗がなければカツラも大きな武器になるはずだ。こちらも何種類か用意したい。
もっとも効果的で劇的に変化するのは、やはり顔をいじること。尾行していて対象者と同じ店に入るときなどは、メガネを着脱したり、くちひげをつけたりするだけで、かなりイメージチェンジできるはず。探偵という仕事をするのなら、メガネは、ボストン、縁、ナスビ型など、最低でも3種類はもっておきたいもの。とくに、視力のいい人はメガネをかけなれていないことがあるので、日頃から度の入っていないメガネをかけるようにしておくほうがいい。メガネで変装するというのは、メガネを上げる動作なども板について、はじめて完成するものなのだ。
メイクについても勉強しておく。とくに男性には縁遠い事柄かもしれないが、きっと違った自分を発見できるにちがいない。たとえば、もとが色白ならば、色落ちしないファンデーションで色黒にするだけで、別人のようになれるはず。また、メイクでイメージを変えるなら眉がポイントになる。ある知り合いのメイクのプロも、
「最も神経をすり減らす部位は眉。眉をどうするかによって、その顔のイメージがまったく変わってしまう」といっていたが、眉が薄ければ、一度アイブローを引いてみればわかるはず。プライベートも充実したりして…・……・。
ができるのでオススメである。あと便利なのは白髪スプレー。あっというまに初老の人間に変装できてしまう。自分の実年齢にとらわれず、不自然ではないかぎり、いろいろなキャラクターに化けることはたいせつ。ときには性別だって無視してもいい。あくまでも、不自然でなければ”という大前提があるが。
また、帽子などの小道具も上手に使いこなせるようになっておこう。ひと昔前に比べ、若年層でのキャップの愛用が増えているが、探偵にとっては好都合。帽子をかぶっていることによって目立ってしまうのでは困る。抵抗がなければカツラも大きな武器になるはずだ。こちらも何種類か用意したい。
もっとも効果的で劇的に変化するのは、やはり顔をいじること。尾行していて対象者と同じ店に入るときなどは、メガネを着脱したり、くちひげをつけたりするだけで、かなりイメージチェンジできるはず。探偵という仕事をするのなら、メガネは、ボストン、縁、ナスビ型など、最低でも3種類はもっておきたいもの。とくに、視力のいい人はメガネをかけなれていないことがあるので、日頃から度の入っていないメガネをかけるようにしておくほうがいい。メガネで変装するというのは、メガネを上げる動作なども板について、はじめて完成するものなのだ。
メイクについても勉強しておく。とくに男性には縁遠い事柄かもしれないが、きっと違った自分を発見できるにちがいない。たとえば、もとが色白ならば、色落ちしないファンデーションで色黒にするだけで、別人のようになれるはず。また、メイクでイメージを変えるなら眉がポイントになる。ある知り合いのメイクのプロも、
「最も神経をすり減らす部位は眉。眉をどうするかによって、その顔のイメージがまったく変わってしまう」といっていたが、眉が薄ければ、一度アイブローを引いてみればわかるはず。プライベートも充実したりして…・……・。
顔をいじるというのは、対象者に接近するときには非常に効果的。だが、ルース・テイルのように、対象者から距離を置いている場合はほとんど関係ない。むしろ、服装のほうが重要である。
まず、もっともお手軽なのは、リバーシブルのコートやジャンパー。これなら尾行の途中で着替えることもできる。夏なら、襟や色の違うシャツを着替えることも難しくはないだろう。女性の場合は、ワンピースからジャケット&パンツにするだけで十分イメージチェンジできる。ただし、それに合わせて髪形も変えておいたほうがベター。髪形を変えやすいように、セミロングにしておく女探偵というのはは多いのだ。
変装の上級者になると、服装を変えるだけでなく、詰め物をして体型を変えたりすることもあるが、慣れないと不自然になってしまうので、自分のことをよく知っている人間で試してみてからのほうがいい。もっとも、そこまで凝った変装というのは、時間的な余裕のあるときにしかできないが。
長期戦のときは前日とまったく違う雰囲気の服装にすることや、いかにも探偵とか刑事のようなかっこうをしないことは、いうまでもない注意点だろう。
そして靴。身の回りのモノで、これほど気をつかわなければならないアイテムは顔をいじるというのは、対象者に接近するときには非常に効果的。だが、ルース・テイルのように、対象者から距離を置いている場合はほとんど関係ない。むしろ、服装のほうが重要である。
まず、もっともお手軽なのは、リバーシブルのコートやジャンパー。これなら尾行の途中で着替えることもできる。夏なら、襟や色の違うシャツを着替えることも難しくはないだろう。女性の場合は、ワンピースからジャケット&パンツにするだけで十分イメージチェンジできる。ただし、それに合わせて髪形も変えておいたほうがベター。髪形を変えやすいように、セミロングにしておく女探偵というのはは多いのだ。
変装の上級者になると、服装を変えるだけでなく、詰め物をして体型を変えたりすることもあるが、慣れないと不自然になってしまうので、自分のことをよく知っている人間で試してみてからのほうがいい。もっとも、そこまで凝った変装というのは、時間的な余裕のあるときにしかできないが。
長期戦のときは前日とまったく違う雰囲気の服装にすることや、いかにも探偵とか刑事のようなかっこうをしないことは、いうまでもない注意点だろう。
そして靴。身の回りのモノで、これほど気をつかわなければならないアイテムは他にないかもしれない。というのも、足を使う商売だから、すぐに消耗してしまうし(それを他人に見とがめられてはいけない)、なるべく足音のしないものを選ばなければならないからだ。スーツを着用しているときに履く革靴も、実は足音のしないラバーソールだったりするのだ。
靴を利用した変装といえば、やはり、シークレットシューズであろう。かかとのないベタ靴と、2段底でかかとが7cm以上もあるシークレット・シューズの組み合わせで、まったく別の人間を演じることが可能。身長が違うというのは効果的だ。
誰でも服装や髪形でイメージチェンジをすることはあるから、かなり警戒心の強い対象者なら、そういう部分の変化にピンとくることはある。ところが、身長が変わるというのは特殊(探偵ぐらいしかしない)だから、無意識に別人と思い込んでしまう心理が働くのだろう。
各部位についての説明は、おおよそこんなところである。しかし、大切なのはバランスの取れた組み合わせである。変装に凝るのもいいが、できるだけさり気なくお手軽に、それでいてガラリとイメージを変化させることを考えるようにする。たとえばマフラー1本で全体の画調を変えるとか。また、ホームレスや酔っぱらいに変装することも多い。
姿形だけ変わっても、まだ変装が完成したとはいいがたい。とくに、聞き込みをするときなどは、聴取者とやりとりをするわけだから、中身も成りきらなければならない。もちろん、名刺を用意することも忘れてはいけないが、それとともに、し
ぐさや言葉づかいなどにも気をつける必要がある。俳優でいうところの役作りだ。
たとえば、"休日に公園を散歩する人生に疲れた初老のサラリーマン"に扮したとしよう。髪の一部には白いものが混じり、メイクで彼を作り、服装もそれなりのかっこうだったとしても、姿勢や歩きかたが妙にシャキっとしていては、せっかくの変装も台無しなのだ。しかも、若々しい声で、「このあいだゲレンデでナンパレたコがさぁ~・・•・•」などといおうものなら、完全にレッドカード。
もちろん、張り込みや尾行の途中でくだらない私語をベラベラしゃべることはないだろうし、これはあまりにも極端な例だが、自分がどういうキャラクターに扮しているのかを忘れると、かなり奇妙で目立つものになるとだけは肝に命じておかねばならない。
変装というのは、実に効果的で必要不可々なテクニックではあるが、失敗したときのダメージは取り返しのつかないほど大きい。その場で探偵(一部の変装趣味をもった人以外に他の職業では考えられない)であることがバレてしまうし、探偵が自分のことを調査していると知った対象者は、警戒心の殻に閉じこもってしまうことになる。
調査が長期戦になればなるほど、変装のテクニックがものをいう。それだけ周囲の目にさらされるからで、いつも同じ変装というわけにはいかなくなってくる。最低でも4パターンのバリエーションをもっていなければならない。ブルーカラー、ホワイトカラー、マスコミ風、宅配業者など、できるだけ広範囲にレパートリーをもっておくと、どんなシチュエーションでも対応しやすい。
当然、ファッションや職業についての広い知識が必要になる。とりわけ、ファッションについては、調査報告書を作成する際にも、細かな分類をして克明に記述しなければならないという必要性があるので、是非とも勉強しておきたいところ。もっとも、探偵は観察眼が生命線なのだから、街を歩いていて、どのような層の人間がどのような格好をしているのか、ということに疎いようでは、あまり適性がないと考えられる。
もうひとつ、変装について注意しなければならないことがある。それは、目立つてはいけないということだ。言い換えれば、印象の強い探偵というのは、あまり優秀ではないということだ。"採偵は名優たれ”という格言があるが、変装について、俳優との最大の点は(俳優の場合は変装とはいわないが)、存在感を薄めるということだ。元のイメージからガラッと変わっていても、人目をひいてしまう変装はNGなのである。
では、実際に、どのように変装をすればよいのかについて、上から順に説明していくことにしよう。まずは頭。ヘアスタイルというのは大きくイメージを変えるもの。なおかつ手軽に変化させることができるので、常日頃から自分であれこれ試しておくといい。
たとえば、朝、セットしないで手櫛だけで済ませて自然な感じにしてみたり、ポリュームアップするシャンプーを使ってみるだけでも、ずいぶんといろいろバリエーションができるはず。尾行の際に整髪剤を携帯しておけば、簡単に変装することができるのでオススメである。あと便利なのは白髪スプレー。あっというまに初老の人間に変装できてしまう。自分の実年齢にとらわれず、不自然ではないかぎり、いろいろなキャラクターに化けることはたいせつ。ときには性別だって無視してもいい。あくまでも、不自然でなければ”という大前提があるが。
また、帽子などの小道具も上手に使いこなせるようになっておこう。ひと昔前に比べ、若年層でのキャップの愛用が増えているが、探偵にとっては好都合。帽子をかぶっていることによって目立ってしまうのでは困る。抵抗がなければカツラも大きな武器になるはずだ。こちらも何種類か用意したい。
もっとも効果的で劇的に変化するのは、やはり顔をいじること。尾行していて対象者と同じ店に入るときなどは、メガネを着脱したり、くちひげをつけたりするだけで、かなりイメージチェンジできるはず。探偵という仕事をするのなら、メガネは、ボストン、縁、ナスビ型など、最低でも3種類はもっておきたいもの。とくに、視力のいい人はメガネをかけなれていないことがあるので、日頃から度の入っていないメガネをかけるようにしておくほうがいい。メガネで変装するというのは、メガネを上げる動作なども板について、はじめて完成するものなのだ。
メイクについても勉強しておく。とくに男性には縁遠い事柄かもしれないが、きっと違った自分を発見できるにちがいない。たとえば、もとが色白ならば、色落ちしないファンデーションで色黒にするだけで、別人のようになれるはず。また、メイクでイメージを変えるなら眉がポイントになる。ある知り合いのメイクのプロも、
「最も神経をすり減らす部位は眉。眉をどうするかによって、その顔のイメージがまったく変わってしまう」といっていたが、眉が薄ければ、一度アイブローを引いてみればわかるはず。プライベートも充実したりして…・……・。
ができるのでオススメである。あと便利なのは白髪スプレー。あっというまに初老の人間に変装できてしまう。自分の実年齢にとらわれず、不自然ではないかぎり、いろいろなキャラクターに化けることはたいせつ。ときには性別だって無視してもいい。あくまでも、不自然でなければ”という大前提があるが。
また、帽子などの小道具も上手に使いこなせるようになっておこう。ひと昔前に比べ、若年層でのキャップの愛用が増えているが、探偵にとっては好都合。帽子をかぶっていることによって目立ってしまうのでは困る。抵抗がなければカツラも大きな武器になるはずだ。こちらも何種類か用意したい。
もっとも効果的で劇的に変化するのは、やはり顔をいじること。尾行していて対象者と同じ店に入るときなどは、メガネを着脱したり、くちひげをつけたりするだけで、かなりイメージチェンジできるはず。探偵という仕事をするのなら、メガネは、ボストン、縁、ナスビ型など、最低でも3種類はもっておきたいもの。とくに、視力のいい人はメガネをかけなれていないことがあるので、日頃から度の入っていないメガネをかけるようにしておくほうがいい。メガネで変装するというのは、メガネを上げる動作なども板について、はじめて完成するものなのだ。
メイクについても勉強しておく。とくに男性には縁遠い事柄かもしれないが、きっと違った自分を発見できるにちがいない。たとえば、もとが色白ならば、色落ちしないファンデーションで色黒にするだけで、別人のようになれるはず。また、メイクでイメージを変えるなら眉がポイントになる。ある知り合いのメイクのプロも、
「最も神経をすり減らす部位は眉。眉をどうするかによって、その顔のイメージがまったく変わってしまう」といっていたが、眉が薄ければ、一度アイブローを引いてみればわかるはず。プライベートも充実したりして…・……・。
顔をいじるというのは、対象者に接近するときには非常に効果的。だが、ルース・テイルのように、対象者から距離を置いている場合はほとんど関係ない。むしろ、服装のほうが重要である。
まず、もっともお手軽なのは、リバーシブルのコートやジャンパー。これなら尾行の途中で着替えることもできる。夏なら、襟や色の違うシャツを着替えることも難しくはないだろう。女性の場合は、ワンピースからジャケット&パンツにするだけで十分イメージチェンジできる。ただし、それに合わせて髪形も変えておいたほうがベター。髪形を変えやすいように、セミロングにしておく女探偵というのはは多いのだ。
変装の上級者になると、服装を変えるだけでなく、詰め物をして体型を変えたりすることもあるが、慣れないと不自然になってしまうので、自分のことをよく知っている人間で試してみてからのほうがいい。もっとも、そこまで凝った変装というのは、時間的な余裕のあるときにしかできないが。
長期戦のときは前日とまったく違う雰囲気の服装にすることや、いかにも探偵とか刑事のようなかっこうをしないことは、いうまでもない注意点だろう。
そして靴。身の回りのモノで、これほど気をつかわなければならないアイテムは顔をいじるというのは、対象者に接近するときには非常に効果的。だが、ルース・テイルのように、対象者から距離を置いている場合はほとんど関係ない。むしろ、服装のほうが重要である。
まず、もっともお手軽なのは、リバーシブルのコートやジャンパー。これなら尾行の途中で着替えることもできる。夏なら、襟や色の違うシャツを着替えることも難しくはないだろう。女性の場合は、ワンピースからジャケット&パンツにするだけで十分イメージチェンジできる。ただし、それに合わせて髪形も変えておいたほうがベター。髪形を変えやすいように、セミロングにしておく女探偵というのはは多いのだ。
変装の上級者になると、服装を変えるだけでなく、詰め物をして体型を変えたりすることもあるが、慣れないと不自然になってしまうので、自分のことをよく知っている人間で試してみてからのほうがいい。もっとも、そこまで凝った変装というのは、時間的な余裕のあるときにしかできないが。
長期戦のときは前日とまったく違う雰囲気の服装にすることや、いかにも探偵とか刑事のようなかっこうをしないことは、いうまでもない注意点だろう。
そして靴。身の回りのモノで、これほど気をつかわなければならないアイテムは他にないかもしれない。というのも、足を使う商売だから、すぐに消耗してしまうし(それを他人に見とがめられてはいけない)、なるべく足音のしないものを選ばなければならないからだ。スーツを着用しているときに履く革靴も、実は足音のしないラバーソールだったりするのだ。
靴を利用した変装といえば、やはり、シークレットシューズであろう。かかとのないベタ靴と、2段底でかかとが7cm以上もあるシークレット・シューズの組み合わせで、まったく別の人間を演じることが可能。身長が違うというのは効果的だ。
誰でも服装や髪形でイメージチェンジをすることはあるから、かなり警戒心の強い対象者なら、そういう部分の変化にピンとくることはある。ところが、身長が変わるというのは特殊(探偵ぐらいしかしない)だから、無意識に別人と思い込んでしまう心理が働くのだろう。
各部位についての説明は、おおよそこんなところである。しかし、大切なのはバランスの取れた組み合わせである。変装に凝るのもいいが、できるだけさり気なくお手軽に、それでいてガラリとイメージを変化させることを考えるようにする。たとえばマフラー1本で全体の画調を変えるとか。また、ホームレスや酔っぱらいに変装することも多い。
姿形だけ変わっても、まだ変装が完成したとはいいがたい。とくに、聞き込みをするときなどは、聴取者とやりとりをするわけだから、中身も成りきらなければならない。もちろん、名刺を用意することも忘れてはいけないが、それとともに、し
ぐさや言葉づかいなどにも気をつける必要がある。俳優でいうところの役作りだ。
たとえば、"休日に公園を散歩する人生に疲れた初老のサラリーマン"に扮したとしよう。髪の一部には白いものが混じり、メイクで彼を作り、服装もそれなりのかっこうだったとしても、姿勢や歩きかたが妙にシャキっとしていては、せっかくの変装も台無しなのだ。しかも、若々しい声で、「このあいだゲレンデでナンパレたコがさぁ~・・•・•」などといおうものなら、完全にレッドカード。
もちろん、張り込みや尾行の途中でくだらない私語をベラベラしゃべることはないだろうし、これはあまりにも極端な例だが、自分がどういうキャラクターに扮しているのかを忘れると、かなり奇妙で目立つものになるとだけは肝に命じておかねばならない。
変装というのは、実に効果的で必要不可々なテクニックではあるが、失敗したときのダメージは取り返しのつかないほど大きい。その場で探偵(一部の変装趣味をもった人以外に他の職業では考えられない)であることがバレてしまうし、探偵が自分のことを調査していると知った対象者は、警戒心の殻に閉じこもってしまうことになる。