証拠写真の撮影・調査報告書の書き方
2025年11月19日
図解 秘探偵・調査マニュアル
渡邉 直美
調査の結果は証拠写真と報告書によって依頼者に伝えられる。どんなに優秀な探偵が手間をかけて調査したとしても、きちんとした形で依頼者に報告しなければ、プロとして仕事を遂行したことにはならない。そこで、証拠写真の撮影のしかたと、報告書の書きかたについて述べることにしよう。
◎証拠写真はこう撮る
まずは証拠写真の撮影のしかた。調査の写真は、ピンぼけしていない、ブレていない、暗くない、の3つの条件を満たしてなければいけない。暗いところでオートフォーカスを使うとピンぼけの原因になりやすいので、なるべくマニュアルでピントを合わせるようにすることである。ブレについては、歩きながら撮影することも多いのでしかたのない面もあるが、正しいカメラの構え方を覚えるだけでもずいぶん違うはず。両足を肩幅に広げて上半身を安定させ、脇を閉めてしっかりとレンズを支えるのがコツ。写真が暗くなってしまうのは、カメラのレンズに入る光量が少ないため。シャッタースピードを遅くする、レンズの絞りを開ける、明るいレンズを使用する、などの対処法が挙げられる。
基本的な撮影術を身につけたところで、証拠写真の証拠写真たるアングルについても、注意を払っておかなければならない。依頼者が見て、調査料を納得して支払えるような写真でなければ意味がない。ポイントは何かというと、アングルと距離なのである。
初心者がもっとも陥りやすいミスというのは、対象者の後方はるかかなたから撮影してしまうということ。対象者の姿は、風景写真のなかにポツンと米粒くらいの大きさでしか写っていないというお粗末さだ。対象者にバレるのを恐れるあまり、ついつい離れて撮影してしまうものなのだ。尾行をしながらなので、初めのうちはしかたないかもしれないが。
だが、最も依頼者を納得させる写真は、対象者の顔のアップの写真なのだ。自分の夫(妻)が、浮気相手といっしょにいるときはどんな顔をしているのか?"というのは、依頼者にとっては大きな関心事である。対象者のスキを狙って至近距離で撮るという姿勢が必要だ。シワの本数まで数えられるような写真をコンスタントに撮れるようになったら、もう一人前の探偵である。
顔のアップが撮れるようになれば、証拠写真のもうひとつの大きな要素である”対象者はどこにいるのか”がわかるような写真も撮れるようになる。初めから背景を意識しすぎると、先述したような米粒写真”になってしまいかねないが•・・・・・。プロの探偵が撮った写真として価値があるのは、誰が””どこで”ということが明確になっているもの。たとえば、ホテルから出てきたところを写真に撮るのであれば、ホテルの看板もフレームに入るようにするとか、街を歩いている写真を撮るのであれば、番地プレートや地名の入った道路標識を挟み込むというような具合だ。
さらに、日付や時間を表示できるカメラであれば、もちろん日時を入れておくに越したことはない。”いつ”ということも、正確に報告できるようになる。
あとは、いかにしてシャッターチャンスを作りだすかというテクニックだ。毎度、突撃隊よろしく対象者のスキを伺っているばかりでは、成功率が低くなることも否めない。よく使われる手法としては、やはり隠し撮りである。バッグなどの小道具に(超)小型CCDカメラを仕込んでおいて、対象者とスレ違うときに上手に角度を変えて撮影する。ファインダーを覗きながら撮ることができないので、かなり撮影技術を習熟しなければ難しいかもしれない。
不倫旅行などの旅先での写真を撮るのは意外と簡単だったりする。こちらもカップルで旅行をしているフリをするのである。旅先の記念写真を撮っているように見
せかけて対象者も写真に納めてしまえば、よほど警戒心が強くないかぎりは楽である。
また、浮気調査などの場合は夜間にシャッターチャンスがやってくることも多い。
しかし、フラッシュを焚くわけにもいかないし、赤外線カメラだと映像が粗くなってしまうこともある。そんなときにはクルマのヘッドライトを利用する。たとえば、対象者がホテルやマンションから出てきたときに、あたかも通りすがりのクルマのように見せかけてヘッドライトで対象者を照らして撮る。これがけっこうきれいに写ってしまうのだ。
◎調査報告書はこう言く
しかし、写真だけを渡されても、依頼者には事の顛末がわからない。その写真を活かすためには、微に入り細を穿つような緻密な報告書が必要である。探偵社にとっての商品は報告書(写真も含む)しかないのだということは、プロとして肝に命じておかなければならない。どんなに努力をしても、あるいは、どんなに衝撃的な事実をつかんでも、その現場を知らない依頼主に立証できなければ意味がない。探偵社の唯一の商品である報告書によってのみ、それが実現するのだ。
報告書を書くには文章構成力が必要だ。とはいっても、中学3年生くらいの国語力で十分なのだが。それでも、実際に書いてみると、新米だとなかなかうまく書けなかったりするものである。報告書作成のポイントは、装飾こそ不必要だが、下寧で、わかりやすく、読んでいたらまるで絵を見るように情景が浮かび上がってくる”ようにすることなのである。要点を抑えた簡潔な表現を用いて詳細で具体的な事実を記述する。
報告書の作成順序に沿っていうと、調査日(平成〇年から記入)、対象者氏名(敬称記入)、対象者住所(都道府県から記入)、指定事項、調査開始の挨拶が前記。
このあたりまではとくに問題はないはず。それから内容に入るわけだが、各記録には必ず時間を明記することを忘れてはいけない。調査を開始した場所を明記し、そこの出入口の場所、エレベーターの基数、予想される進入経路も記入しておく。このあたりまでは予備調査の段階で作成できる範囲である。
本調査が進むと同時に、張り込み中の状況をはじめ、外出時の対象者の状況や服装(かなり克明に)、進行方向(交差点名や道路名だけでなく距離や速度も)、様子、展開などを記載していく。対象者の様子を描写する際に注意しなければならないのは、調査員の主観的な憶測を書き連ねたりしないこと。目で見ることができるもの以上の推察はタブー。
もしその推察が事実と異なる場合、報告書全体の倍用がなくなってしまうからだ。
また、展開というのは接触者について。もちろん、接触した場所や時間、および接触者の服装や風貌などを記録するのもたいせつだが、最も重視されるのは、対象者と接触者との間の会話内容になる。会話内容を聞き取る距離まで接近できるかどうかは調査員の腕の見せどころといってもいいだろう。調査の終了は、調査員ではなく、依頼者もしくは調査本部にいる相談を受けた者が決定する。その旨を文末に明記してその日の報告書を締める。
調査内容を記載したあとに、まとめとして調査所見を記入する。所見は、対象者が浮気相手と入ったホテルの料金やシステムについての追加説明 (補足調査による)
などの重要点の解説、調査終了後の対象者の行動予想、過去の体験との比較や考察(参考程度)、依頼者に対する今後の調査についてのメッセージ、調査員の直筆サインと印鑑捺印で構成する。行動予想については、深深夜、シティホテルにチェックイン→泊まる”など、かなり確度の高い予想のみを記入する。
模範的な調査報告書なら1日分で20枚近くなることも珍しくない。もちろん、無駄なことは一切なくてその分量なのだ。それだけ具体的かつ詳細に作成されたものだからこそ、商品として依頼者に売ることができるのである。
◎証拠写真はこう撮る
まずは証拠写真の撮影のしかた。調査の写真は、ピンぼけしていない、ブレていない、暗くない、の3つの条件を満たしてなければいけない。暗いところでオートフォーカスを使うとピンぼけの原因になりやすいので、なるべくマニュアルでピントを合わせるようにすることである。ブレについては、歩きながら撮影することも多いのでしかたのない面もあるが、正しいカメラの構え方を覚えるだけでもずいぶん違うはず。両足を肩幅に広げて上半身を安定させ、脇を閉めてしっかりとレンズを支えるのがコツ。写真が暗くなってしまうのは、カメラのレンズに入る光量が少ないため。シャッタースピードを遅くする、レンズの絞りを開ける、明るいレンズを使用する、などの対処法が挙げられる。
基本的な撮影術を身につけたところで、証拠写真の証拠写真たるアングルについても、注意を払っておかなければならない。依頼者が見て、調査料を納得して支払えるような写真でなければ意味がない。ポイントは何かというと、アングルと距離なのである。
初心者がもっとも陥りやすいミスというのは、対象者の後方はるかかなたから撮影してしまうということ。対象者の姿は、風景写真のなかにポツンと米粒くらいの大きさでしか写っていないというお粗末さだ。対象者にバレるのを恐れるあまり、ついつい離れて撮影してしまうものなのだ。尾行をしながらなので、初めのうちはしかたないかもしれないが。
だが、最も依頼者を納得させる写真は、対象者の顔のアップの写真なのだ。自分の夫(妻)が、浮気相手といっしょにいるときはどんな顔をしているのか?"というのは、依頼者にとっては大きな関心事である。対象者のスキを狙って至近距離で撮るという姿勢が必要だ。シワの本数まで数えられるような写真をコンスタントに撮れるようになったら、もう一人前の探偵である。
顔のアップが撮れるようになれば、証拠写真のもうひとつの大きな要素である”対象者はどこにいるのか”がわかるような写真も撮れるようになる。初めから背景を意識しすぎると、先述したような米粒写真”になってしまいかねないが•・・・・・。プロの探偵が撮った写真として価値があるのは、誰が””どこで”ということが明確になっているもの。たとえば、ホテルから出てきたところを写真に撮るのであれば、ホテルの看板もフレームに入るようにするとか、街を歩いている写真を撮るのであれば、番地プレートや地名の入った道路標識を挟み込むというような具合だ。
さらに、日付や時間を表示できるカメラであれば、もちろん日時を入れておくに越したことはない。”いつ”ということも、正確に報告できるようになる。
あとは、いかにしてシャッターチャンスを作りだすかというテクニックだ。毎度、突撃隊よろしく対象者のスキを伺っているばかりでは、成功率が低くなることも否めない。よく使われる手法としては、やはり隠し撮りである。バッグなどの小道具に(超)小型CCDカメラを仕込んでおいて、対象者とスレ違うときに上手に角度を変えて撮影する。ファインダーを覗きながら撮ることができないので、かなり撮影技術を習熟しなければ難しいかもしれない。
不倫旅行などの旅先での写真を撮るのは意外と簡単だったりする。こちらもカップルで旅行をしているフリをするのである。旅先の記念写真を撮っているように見
せかけて対象者も写真に納めてしまえば、よほど警戒心が強くないかぎりは楽である。
また、浮気調査などの場合は夜間にシャッターチャンスがやってくることも多い。
しかし、フラッシュを焚くわけにもいかないし、赤外線カメラだと映像が粗くなってしまうこともある。そんなときにはクルマのヘッドライトを利用する。たとえば、対象者がホテルやマンションから出てきたときに、あたかも通りすがりのクルマのように見せかけてヘッドライトで対象者を照らして撮る。これがけっこうきれいに写ってしまうのだ。
◎調査報告書はこう言く
しかし、写真だけを渡されても、依頼者には事の顛末がわからない。その写真を活かすためには、微に入り細を穿つような緻密な報告書が必要である。探偵社にとっての商品は報告書(写真も含む)しかないのだということは、プロとして肝に命じておかなければならない。どんなに努力をしても、あるいは、どんなに衝撃的な事実をつかんでも、その現場を知らない依頼主に立証できなければ意味がない。探偵社の唯一の商品である報告書によってのみ、それが実現するのだ。
報告書を書くには文章構成力が必要だ。とはいっても、中学3年生くらいの国語力で十分なのだが。それでも、実際に書いてみると、新米だとなかなかうまく書けなかったりするものである。報告書作成のポイントは、装飾こそ不必要だが、下寧で、わかりやすく、読んでいたらまるで絵を見るように情景が浮かび上がってくる”ようにすることなのである。要点を抑えた簡潔な表現を用いて詳細で具体的な事実を記述する。
報告書の作成順序に沿っていうと、調査日(平成〇年から記入)、対象者氏名(敬称記入)、対象者住所(都道府県から記入)、指定事項、調査開始の挨拶が前記。
このあたりまではとくに問題はないはず。それから内容に入るわけだが、各記録には必ず時間を明記することを忘れてはいけない。調査を開始した場所を明記し、そこの出入口の場所、エレベーターの基数、予想される進入経路も記入しておく。このあたりまでは予備調査の段階で作成できる範囲である。
本調査が進むと同時に、張り込み中の状況をはじめ、外出時の対象者の状況や服装(かなり克明に)、進行方向(交差点名や道路名だけでなく距離や速度も)、様子、展開などを記載していく。対象者の様子を描写する際に注意しなければならないのは、調査員の主観的な憶測を書き連ねたりしないこと。目で見ることができるもの以上の推察はタブー。
もしその推察が事実と異なる場合、報告書全体の倍用がなくなってしまうからだ。
また、展開というのは接触者について。もちろん、接触した場所や時間、および接触者の服装や風貌などを記録するのもたいせつだが、最も重視されるのは、対象者と接触者との間の会話内容になる。会話内容を聞き取る距離まで接近できるかどうかは調査員の腕の見せどころといってもいいだろう。調査の終了は、調査員ではなく、依頼者もしくは調査本部にいる相談を受けた者が決定する。その旨を文末に明記してその日の報告書を締める。
調査内容を記載したあとに、まとめとして調査所見を記入する。所見は、対象者が浮気相手と入ったホテルの料金やシステムについての追加説明 (補足調査による)
などの重要点の解説、調査終了後の対象者の行動予想、過去の体験との比較や考察(参考程度)、依頼者に対する今後の調査についてのメッセージ、調査員の直筆サインと印鑑捺印で構成する。行動予想については、深深夜、シティホテルにチェックイン→泊まる”など、かなり確度の高い予想のみを記入する。
模範的な調査報告書なら1日分で20枚近くなることも珍しくない。もちろん、無駄なことは一切なくてその分量なのだ。それだけ具体的かつ詳細に作成されたものだからこそ、商品として依頼者に売ることができるのである。