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2025年11月19日
図解 秘探偵・調査マニュアル
渡邉 直美
探偵の仕事のなかで、もっともツラい作業のひとつが「張り込みで」ある。夏の暑さや冬の寒さを痛感することはいわずもがな。対象者はもちろん、周辺の住人や通行人の日も常に気にしながら行わなければならない。その意味では、私たち探偵のほうが、近所の住人などに協力を要請できる刑事よりも条件が悪いことは否めない。さらに、張り込みというのは、つまるところ対象者の動きが現れるのを待機するわけで、尾行や聞き込みなどに比べるとあまり活動的ではなく、ことさら忍耐力が要求されるのだ。神経をすり減らすことこの上ない。
張り込みの最大のポイントは、どこに張り込むかということ。場所の選定によって効果は大きく異なってくる。行動を起こした対象者の顔をはっきり視認できて、自分の姿が目立ってしまわないようなポイントというのが大原則。しかし、張り込みをするシチュエーションというのは、対象者の自宅前といった住宅地であることも多く、なかなかベストポジションを見つけることは難しいのだ。
たとえば、対象者の自宅のすぐ前が細い路地になっていたとしよう。その地区の住人や訪問者以外は使用しそうもないような細い路地に何時間も張り込んでいたら、対象者や近所の住人の目につくことはいうまでもない。おまけに、対象者や近所の住人の家でよく吠える犬でも飼っていようものなら、まったく張り込みに適さない場所ということになる。そのような場合には、やむをえず対象者の自宅から少し離れた場所（近くに人通りの多い通りがあればベスト）
に陣取る。もちろん、バス停のような人が立っていてもあまり違和感のないようなポイントである。しかし、張り込みの対象となる場所から離れれば、袋小路になっている場所でもないかぎり、それだけチェックも緩くなってしまうので、張り込み要員を増加させなければならなくなる。
体をさらす（＝姿を見せる）張り込みは、あまりめられたものではない。とくに、対象者の行動がほぼつかめかけている場合は注意しなければならない。たとえば、対象者のクルマが停めてある駐車場付近に張り込むよりは、対象者が自宅から出てきて駐車場に向かうときに死角になるような場所を選ぶとか、対象者がマンションやビルにいる場合、その窓からの視界を調べて死角に入るなど、ちょっとした配慮をするかしないかで、効果が大きく違ってきたりするものなのだ。
ほかにも、犬の散歩を装う、近所のお店に頼んで店先の掃除をしながら、近くに店を出す予定なので交通量の調査をしている”と装する、など、ケースバイケースでいろいろなアイデアを出せるはず。ときには、長期的な調査のためにマンションを借りることもあるのだ。
もっとも張り込みにくい場所というのは、やはり道幅が狭くて人通りの少ない住宅地。しかも、先述のとおり、住宅地での張り込みというのは少なくないのだ。対象者にバレにくい場所を確保したとしても、近所の住人の目はなくならない。同じ場所に連続して張り込めるのは、せいぜい30分間から1時間程度が限界である。近所の住人から不審な人”というレッテルを貼られる前に、張り込みポイントを移動しなければならない。その際には、対象者のいる場所を中心に円を描くように、少しずつ移動しながら張り込む。
移動の最中は、死角ができないように、無線やトランシーバーで連絡を取る。通言機器は張り込みに欠かせない。対象者のいる場所の付近に視認できる場所が確保できなくて、少し離れたマンションの屋上などで張り込みをした場合、対象者の動きを察知する調査員と尾行を開始する調査員は別になるが、そんなときにも通言機器は必要になる。
ポイントを確保したからといって、ボケっと待機していればいいというものではない。対象者が現れたら、面取り↓尾行となるのは当たり前だが、対象者と似たような人物を発見した場合にも、きちんと接近して確認をしておかなければならない。
警戒して雰囲気を変えた対象者かもしれないし、そうでなくても、対象者と間違えやすい人物としてチェックしておく。張り込みの場合、長期戦になることも多く、交代制で行われるのが常識なので、後を引き継ぐ調査員のために情報をストックする必要があるのだ。
張り込みをしているときは、行動の面でも目立ってしまってはいけない。原則的には私語や雑談は厳禁だし（シチュエーションによっては例外もある）、対象者の様子を伺うことに夢中になって、不自然な覗きかたをするのもよくない。目立つところにしゃがみこんだりするのもNG。
管理人や守衛などから見える場所でブラブラしたりするのはもってのほかだが、やむをえず、そういう悪条件でしかポイントを見つけられなかった場合には、しばらく張り込んだ後に時計を見てブツブツ文句を言いながら、待ちぼうけを食わされてい
るようなフリをしてウロウロしたり
するほうがかえって自然に見えたりするものだ。
目立たないようにすることは大原則だが、対象者には気づかれないようにして、近所の住人には根回しをするというテクニックもある。たとえば、「私は〇〇社の者ですが、この近所に、わが社の名前を騙って悪質な許欺を働いている者がいるようなので、もし見かけたら教えてください。私もしばらくこのあたりで待ち伏せをしてますので」などと、もっともらしいことをデッチ上げる。そうすれば警察に通報されることはない。
クルマを利用しての張り込みもあるが、こちらもTVの刑事モノのドラマでやっているようなものとはまったく違う。昼間の住宅地で、エンジンをかけてエアコンをつけっぱなしにしたような贅沢な労働条件は、現実的にはありえない。そんな目立つマネをするバカな探偵はいないのだ。エンジンを切っていてさえ、そのような場所でクルマに乗って待機していれば通行人の目につく。そんなことは一般人の経験則でもわかるはず。
よく使うテクニックとしては偽装。洗車セットを持っていって熱心にワックスがけをしたり、オーバーヒートやパンクの修理をしたり、トランクに段ボールを積んでいって仕分作業をしたり、キャリアにスキーやサーフボードを積んで友人を待っていたり、開店のポスターを左右後ろに貼ったり......と、偽装のしかたはいくらでもある。どうしても偽装が面倒なら、後ろのウィンドウにシールドを貼ったワゴンやボックスタイプのクルマを使用する。運転席の後ろに厚手のカーテンを取り付け、ボディには適当な店名のシールを貼っておけばOKである。
クルマに乗ったまま張り込むのであれば、やはり男女2名というのが目立たない。
シールドを貼ったワゴンやワンボックスで張り込む場合には音を立てないように注意する。しかし繁華街に張り込むのでもなければ、クルマに乗ったまま張り込むのは避けたい。できるだけ、クルマは追尾のためだけに利用するようにすべきである。
警戒心の強い対象者のなかには、付近に駐車されているクルマの内部を見て回る強者もいるくらいなのだ。
これは張り込み全般にいえることだが、基本的に面取り要員と尾行要員は別にしたほうが成功率は高い。完全に面取りだけを目的にした調査員であれば、シチュエーションによっては、体をさらして堂々と張り込むこともできる。もし、面取り要員を確保できなければ、対象者のいる場所にCCDカメラを設置した自転車を置いて映像を飛ばしておき、離れたところで張り込んで映像をチェックするという方法も実際に採用されている。要は、頭の使いかたしだいで、いくらでも方法は見つかるということなのだ。
張り込みの最大のポイントは、どこに張り込むかということ。場所の選定によって効果は大きく異なってくる。行動を起こした対象者の顔をはっきり視認できて、自分の姿が目立ってしまわないようなポイントというのが大原則。しかし、張り込みをするシチュエーションというのは、対象者の自宅前といった住宅地であることも多く、なかなかベストポジションを見つけることは難しいのだ。
たとえば、対象者の自宅のすぐ前が細い路地になっていたとしよう。その地区の住人や訪問者以外は使用しそうもないような細い路地に何時間も張り込んでいたら、対象者や近所の住人の目につくことはいうまでもない。おまけに、対象者や近所の住人の家でよく吠える犬でも飼っていようものなら、まったく張り込みに適さない場所ということになる。そのような場合には、やむをえず対象者の自宅から少し離れた場所（近くに人通りの多い通りがあればベスト）
に陣取る。もちろん、バス停のような人が立っていてもあまり違和感のないようなポイントである。しかし、張り込みの対象となる場所から離れれば、袋小路になっている場所でもないかぎり、それだけチェックも緩くなってしまうので、張り込み要員を増加させなければならなくなる。
体をさらす（＝姿を見せる）張り込みは、あまりめられたものではない。とくに、対象者の行動がほぼつかめかけている場合は注意しなければならない。たとえば、対象者のクルマが停めてある駐車場付近に張り込むよりは、対象者が自宅から出てきて駐車場に向かうときに死角になるような場所を選ぶとか、対象者がマンションやビルにいる場合、その窓からの視界を調べて死角に入るなど、ちょっとした配慮をするかしないかで、効果が大きく違ってきたりするものなのだ。
ほかにも、犬の散歩を装う、近所のお店に頼んで店先の掃除をしながら、近くに店を出す予定なので交通量の調査をしている”と装する、など、ケースバイケースでいろいろなアイデアを出せるはず。ときには、長期的な調査のためにマンションを借りることもあるのだ。
もっとも張り込みにくい場所というのは、やはり道幅が狭くて人通りの少ない住宅地。しかも、先述のとおり、住宅地での張り込みというのは少なくないのだ。対象者にバレにくい場所を確保したとしても、近所の住人の目はなくならない。同じ場所に連続して張り込めるのは、せいぜい30分間から1時間程度が限界である。近所の住人から不審な人”というレッテルを貼られる前に、張り込みポイントを移動しなければならない。その際には、対象者のいる場所を中心に円を描くように、少しずつ移動しながら張り込む。
移動の最中は、死角ができないように、無線やトランシーバーで連絡を取る。通言機器は張り込みに欠かせない。対象者のいる場所の付近に視認できる場所が確保できなくて、少し離れたマンションの屋上などで張り込みをした場合、対象者の動きを察知する調査員と尾行を開始する調査員は別になるが、そんなときにも通言機器は必要になる。
ポイントを確保したからといって、ボケっと待機していればいいというものではない。対象者が現れたら、面取り↓尾行となるのは当たり前だが、対象者と似たような人物を発見した場合にも、きちんと接近して確認をしておかなければならない。
警戒して雰囲気を変えた対象者かもしれないし、そうでなくても、対象者と間違えやすい人物としてチェックしておく。張り込みの場合、長期戦になることも多く、交代制で行われるのが常識なので、後を引き継ぐ調査員のために情報をストックする必要があるのだ。
張り込みをしているときは、行動の面でも目立ってしまってはいけない。原則的には私語や雑談は厳禁だし（シチュエーションによっては例外もある）、対象者の様子を伺うことに夢中になって、不自然な覗きかたをするのもよくない。目立つところにしゃがみこんだりするのもNG。
管理人や守衛などから見える場所でブラブラしたりするのはもってのほかだが、やむをえず、そういう悪条件でしかポイントを見つけられなかった場合には、しばらく張り込んだ後に時計を見てブツブツ文句を言いながら、待ちぼうけを食わされてい
るようなフリをしてウロウロしたり
するほうがかえって自然に見えたりするものだ。
目立たないようにすることは大原則だが、対象者には気づかれないようにして、近所の住人には根回しをするというテクニックもある。たとえば、「私は〇〇社の者ですが、この近所に、わが社の名前を騙って悪質な許欺を働いている者がいるようなので、もし見かけたら教えてください。私もしばらくこのあたりで待ち伏せをしてますので」などと、もっともらしいことをデッチ上げる。そうすれば警察に通報されることはない。
クルマを利用しての張り込みもあるが、こちらもTVの刑事モノのドラマでやっているようなものとはまったく違う。昼間の住宅地で、エンジンをかけてエアコンをつけっぱなしにしたような贅沢な労働条件は、現実的にはありえない。そんな目立つマネをするバカな探偵はいないのだ。エンジンを切っていてさえ、そのような場所でクルマに乗って待機していれば通行人の目につく。そんなことは一般人の経験則でもわかるはず。
よく使うテクニックとしては偽装。洗車セットを持っていって熱心にワックスがけをしたり、オーバーヒートやパンクの修理をしたり、トランクに段ボールを積んでいって仕分作業をしたり、キャリアにスキーやサーフボードを積んで友人を待っていたり、開店のポスターを左右後ろに貼ったり......と、偽装のしかたはいくらでもある。どうしても偽装が面倒なら、後ろのウィンドウにシールドを貼ったワゴンやボックスタイプのクルマを使用する。運転席の後ろに厚手のカーテンを取り付け、ボディには適当な店名のシールを貼っておけばOKである。
クルマに乗ったまま張り込むのであれば、やはり男女2名というのが目立たない。
シールドを貼ったワゴンやワンボックスで張り込む場合には音を立てないように注意する。しかし繁華街に張り込むのでもなければ、クルマに乗ったまま張り込むのは避けたい。できるだけ、クルマは追尾のためだけに利用するようにすべきである。
警戒心の強い対象者のなかには、付近に駐車されているクルマの内部を見て回る強者もいるくらいなのだ。
これは張り込み全般にいえることだが、基本的に面取り要員と尾行要員は別にしたほうが成功率は高い。完全に面取りだけを目的にした調査員であれば、シチュエーションによっては、体をさらして堂々と張り込むこともできる。もし、面取り要員を確保できなければ、対象者のいる場所にCCDカメラを設置した自転車を置いて映像を飛ばしておき、離れたところで張り込んで映像をチェックするという方法も実際に採用されている。要は、頭の使いかたしだいで、いくらでも方法は見つかるということなのだ。