私が探偵になったワケ
2025年11月19日
図解 秘探偵・調査マニュアル
渡邉 直美
女だてらに探偵なんぞをしていると、必ず「探偵になったきっかけは?」という質問を受ける。
この10年間というもの、思うところがあって、本当のワケを話したことはなかった。みなさん、ごめんなさい!! この場を借りて謝罪をするとともに、心の封印を解くことにした。
18歳のころ、旅行代理店で働く私には、同僚で
10歳年上の彼氏がいた。仕事熱心で勉強好きな彼に嫌われないように、私も仕事に打ち込み、経理面なども任される立場になっていた。それからの半年間、公私ともに充実した毎日を送っていたが、ある日会社に出勤してみると、なんと、彼は会社を辞めていたのだ。突然のことに驚き、彼の自宅まで押しかけてみたら、すでに引っ越した後のもぬけのから。大家さんに事情を尋ねても、その部屋は会社契約になっていて、彼の名前は聞いたこともないという。彼が会社に提出した履歴に記載されていた実家の住所を訪ねても、手がかりはまったくつかめなかった。
あんなに楽しい日々を共にした彼がいなくなってしまったのは、私にとっては耐えられないことだった。仕事を辞め、必死に彼を捜し求める毎日が続いた。だが、物事というのは、ひょんなことから展開するもの。そんな私を心配した友達に誘われた旅行先で、偶然にも彼を見つけたのだった。
しかし、それも束の間。楽しく食事をしたり、プールで遊んだりして、たった1日だけしか2人で過ごすことはできなかった。約4ヵ月後の再会に、「どうして!?」と尋ねることができないまま、あっというまにお別れの時がきてしまった。別れ際に、「連絡先は教えられないし、たぶんもう会えない。名前も年齢も嘘。僕は潜入調査専門の事務所で働いている探偵なんだ」と、彼。
思いがけない言葉に驚愕し、別れたくないがために、「私も探偵になりたい」とすがる私。だが、そんなことは受け入れてもらえなかった。それでも、「絶対に探偵になってあなたを探す!!」といってきかない私に困った様子の彼は、友人らしき人と2人で写っている1枚の写真を置いて消えてしまった。そういえば、彼は写真を撮られることを嫌がり、私は彼の写真を1枚も持っていなかったが、それもこういうワケだったのだ。
その後、私は彼を探すためにある探偵事務所で働きはじめた。手がかりは彼にもらった写真だけだ。”いつか同じ現場で会えるかもしれない”と、潜入調査部門で。
それから4年間、彼にも、写真の友人にも会うことはできなかった。だが、大きな収穫あった。
すっかり潜入調査員として一人前になった私は、この仕事を好きになっていたのだ。
そんなある日、自宅のポストに1枚のチラシが入っていた。そのチラシには彼の友人にとてもよく似ている男性が写っていた。”ガルエージェンシー代表取締役渡邉文男......ガル探偵学校校長......私は、その足でガルエージェンシーを訪ねた。
本人には会えなかったが、渡邉さんと彼の友人が同一人物であると確信し、「経験があります。働かせてください」と、お願いしてスタッフになり、現在に至るというわけなのだ。
今でも、きっといつかは彼に会えると、私は信じている。そしてそのときは、探偵という職業に招き入れてくれた彼にお礼をいいたい。それと同時に、「私とのつきあいは仕事のためだけでしたか?」と、尋ねてみたい。
この10年間というもの、思うところがあって、本当のワケを話したことはなかった。みなさん、ごめんなさい!! この場を借りて謝罪をするとともに、心の封印を解くことにした。
18歳のころ、旅行代理店で働く私には、同僚で
10歳年上の彼氏がいた。仕事熱心で勉強好きな彼に嫌われないように、私も仕事に打ち込み、経理面なども任される立場になっていた。それからの半年間、公私ともに充実した毎日を送っていたが、ある日会社に出勤してみると、なんと、彼は会社を辞めていたのだ。突然のことに驚き、彼の自宅まで押しかけてみたら、すでに引っ越した後のもぬけのから。大家さんに事情を尋ねても、その部屋は会社契約になっていて、彼の名前は聞いたこともないという。彼が会社に提出した履歴に記載されていた実家の住所を訪ねても、手がかりはまったくつかめなかった。
あんなに楽しい日々を共にした彼がいなくなってしまったのは、私にとっては耐えられないことだった。仕事を辞め、必死に彼を捜し求める毎日が続いた。だが、物事というのは、ひょんなことから展開するもの。そんな私を心配した友達に誘われた旅行先で、偶然にも彼を見つけたのだった。
しかし、それも束の間。楽しく食事をしたり、プールで遊んだりして、たった1日だけしか2人で過ごすことはできなかった。約4ヵ月後の再会に、「どうして!?」と尋ねることができないまま、あっというまにお別れの時がきてしまった。別れ際に、「連絡先は教えられないし、たぶんもう会えない。名前も年齢も嘘。僕は潜入調査専門の事務所で働いている探偵なんだ」と、彼。
思いがけない言葉に驚愕し、別れたくないがために、「私も探偵になりたい」とすがる私。だが、そんなことは受け入れてもらえなかった。それでも、「絶対に探偵になってあなたを探す!!」といってきかない私に困った様子の彼は、友人らしき人と2人で写っている1枚の写真を置いて消えてしまった。そういえば、彼は写真を撮られることを嫌がり、私は彼の写真を1枚も持っていなかったが、それもこういうワケだったのだ。
その後、私は彼を探すためにある探偵事務所で働きはじめた。手がかりは彼にもらった写真だけだ。”いつか同じ現場で会えるかもしれない”と、潜入調査部門で。
それから4年間、彼にも、写真の友人にも会うことはできなかった。だが、大きな収穫あった。
すっかり潜入調査員として一人前になった私は、この仕事を好きになっていたのだ。
そんなある日、自宅のポストに1枚のチラシが入っていた。そのチラシには彼の友人にとてもよく似ている男性が写っていた。”ガルエージェンシー代表取締役渡邉文男......ガル探偵学校校長......私は、その足でガルエージェンシーを訪ねた。
本人には会えなかったが、渡邉さんと彼の友人が同一人物であると確信し、「経験があります。働かせてください」と、お願いしてスタッフになり、現在に至るというわけなのだ。
今でも、きっといつかは彼に会えると、私は信じている。そしてそのときは、探偵という職業に招き入れてくれた彼にお礼をいいたい。それと同時に、「私とのつきあいは仕事のためだけでしたか?」と、尋ねてみたい。