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探偵の知識

調查無料の天涯孤独な探偵

2025年11月19日

図解 秘探偵・調査マニュアル
渡邉 直美

ガルエージェンシーという探偵事務所に所属しているといっても、我々探偵は全員独立採算制。だから、誰かの調査の手助けをした場合には、お金を頂くのが常識。
むろん、私もいつもはそうしている。ある人の手助けをするとき以外は…・…..。
その人は、浮気や産業スパイ探しといった調査はまったくやらない。彼が触手を動かすのは、もっぱら人探しのみ。依頼を受けたら最後、とにかく徹底的にやる。
そして、あと一歩でわかる・・・・・という時に彼はしばしば私のところへ助けを求めてくるのだ。
「なんだ、そこまでわかっているんだったら簡単じゃない」と、思わず引き受けてしまうのだが、彼からは一向にお金が回ってこない。おかしいなぁと思い、彼に聞いてみたら・・・・・なんと、依頼者からは一銭ももらっていないというのだ!! 開いた口がふさがらないとはこういうことを言うのではないだろうか。しかし、彼がお金も取らずに人探しをする理由を知っている私は、どうしても強く言えない。
実は彼、天涯孤独の孤児だったのだ。捨て子だった彼は、中学まで孤児院で過ごし、高校にも行っていないという。おそらく、人探し”という行為に、自分の身の上に起きたことを投影してしまい、お金をとれないのではないだろうか。
”人探し”に没頭してしまうのは、なにも仕事のうえだけではない。テレビや新聞などで「子供が行方不明になった」と聞けば、いてもたってもいられず、必ず現地へ出向き、ボランティアで捜索活動に参加するのだから、並大抵のパワーではない。
そんなパワーがあるんだったら自分の親も探し出すことができるのでは!?! 皆さんはこう思うはず。もちろん、捜査ずみ。
あとひと押しすればわかるというところまで来ているという。
しかし・・・・・・そのあとひと押しをするべきなのかどうか、彼は悩んでいるらしい。