ホーム

探偵の知識

トラックで尾行する八百屋探偵

2025年11月19日

図解 秘探偵・調査マニュアル
渡邉 直美

ただでさえ困難な聞き込みが、とんでもない人に邪魔されることがある。例えば数年前、浮気調査のため都内の団地を訪れたときのことだった。どの家を訊ねても「あなた、八百屋さんのところの人!!」とか「あっ、探偵さんでしょ!なに調べているの?」と、逆に突っ込まれてしまい、まったく聞き込みにならない始末。しかも、八百屋さんとは......。
この聞き込み失敗の理由を探るために、団地の敷地内をよく見回すと、そこに軽トラックの八百屋が!! ピンと来た私は、すぐにバイクチームを呼び、この軽トラックを尾行させた。そして、ナンバーからも調査を開始した。もしかしたら、ライバル探偵会社の妨害、ということも考えられるからである。結果は…・・・正真正銘の千葉から出てくる八百屋さんだった。しかし、単なる八百屋ではなかった。彼は団地の奥様方には有名な八百屋探偵だったのだ。“那が浮気しているらしいのだが、どう調べたらいいだろうか”日那のヘソクリはどこにあるだろうか" 「子供が放課後なにをやっているか知りたい”など、本来なら私たちがやるべき仕事を格安で請け負っていたのだ!!! ま、これだかなら問題はなかったのだが、この素人探偵、会う人会う人に、「本物の探偵に頼んだら高いよ。探偵なんてボッタクリだから」と、私たち探偵の悪口を言って回っていたのだ!!!これでは、聞き込みが成功するワケがない・・・・・。
私は"家庭の主婦”に変装して、彼に接触した。「ねぇ、旦那が浮気しているみたいなんだけど、調べる方法あるかしら?」すると彼は、「ああ、相談に乗るよ。オレ、この前まで探偵やってたんだ。探偵なんかに頼むと高いから、オレが調べてやるよ」調子に乗ってしゃべる彼に、私は名刺を差し出して聞いた。
「実は、私、こういうもんなんですが、どちらで探偵やられていたんですか?」あまりに驚いた彼は、私のこの白々しい質問に答えられなかった。
しかし、私にはこれ以上彼をいじめるつもりはなかった。こんなに団地妻とコネクションを持っている人を敵に回すのは得策ではないからだ。
現在、彼はわがガルエージェンシーの調査員として活躍している。もともと探偵に憧れていた彼も、それには大感激。もちろん、それ以来、探偵の悪口も言わなくなったらしい(笑)。