男の浮気とは、「午前4時の赤信号」みたいなものである
2025年11月19日
浮気とは「午前4時の赤信号」である。
すずきB
うちの母ヒデコや親戚のおばちゃんが温泉に行くと、ヒデコたちは必ず言う。
「いいねえ、旅館は、上げ膳据え膳で、何もしなくていいでラクだわ」と。
その言葉を聞くたびに、僕はあの時の悪夢のような朝と、鬼の言葉を思い出す。
それは、僕が前夜浮気して帰ったのが鬼にバレ、叩き起こされながら完全に追い込まれた朝だった。
鬼は僕のケータイを手にして画面をこっちに見せながら、
「なんだよ、このメールはよ! 〝昨日はごちそうさまでした、甘く素敵な夜をありがとう〟。奥さんにバレないようにこっそり削除してね、って、何やってんだ、お前は!」
動揺しながら僕が答えた。
「合コンで盛り上がって、向こうがノリノリで……」
すると鬼はこうキレた。
「ふざけんな! 上げ膳据え膳、男の恥だかなんだか知らねえけどよ……」
「……」
絶句である。それを言うなら〝据え膳食わぬは男の恥〟だろ? と心でつっこみ、だがじっと我慢した。
そう、「上げ膳据え膳」にちょっと似ているけど使いどこを間違うと恥ずかしい「据え膳食わぬは男の恥」ということわざ。
女性のほうから誘っているのに男性がその女性の誘いに応じない、つまり抱かないのは男として恥である、という意味(別に前夜、僕がモテると言ってるのではない。男というものはこういう時に見栄を張るもので……)。
鬼はとっくに僕に問い詰める。
「お前は、なんでそんな浮気したいんだ?」
なぜ自分は浮気しちゃうのか、必死に答えを考える。〝ただの女好き〟。そう言うのは簡単だが、それでは鬼は納得しない。
まず、昨夜の浮気についてだが、僕の中では、そんなに悪いことをしたつもりはない。相手の女性には悪いが……いや悪くない、結婚してることも言ってあるんだから、合意の浮気。合法的浮気。でもそれは、鬼に対して筋が通らないのもわかる。何とかして納得させたい。
Q、なんで浮気するのか?
その時出た、僕の答えは……
「男の浮気ってのは、午前4時の赤信号みたいなもんなんだよ」
まだ暗い午前4時、新聞配達のバイクの音ぐらいしか聞こえない静かな時間。歩いていたら交差点の信号が赤だった。常識で言えば、立ち止まるのがルール。右を見ても左を見ても、クルマも、バイクも、自転車も、人も、そしてパトカーや警察官もいない。本来信号は、危険を回避するためのもの。しかるに今は100%安全だ。
赤信号で渡るのが悪いことだとはわかっている。しかし、この赤信号で立ち止まることは、大人として逆にアホなような気もする。
「……みたいな感じで、つい……」と、僕は説明した。
自分が結婚してることも子供がいることも相手に伝えてあって、それでもいいのなら的な流れでこうなってるのだから、ホントは赤信号だけど、安全だから、いいんじゃないか? と。悪いことかもしれないけど、夜中、人もクルマもいなかったら赤信号だけど渡るでしょ? ね? と同意を求めながら、必死で説明した。
「据え膳食わぬは男の恥って言うじゃない?」と加えるのは我慢して(笑)。
一瞬、納得した表情を見せたが、鬼は言った。
「あのさー、その女がどこの馬の骨だか知らねーけどよ、こうやってオレにメールで見つかってる時点で安全なのか? どうなんだよ、ああ!?」(鬼のセリフは実際のやりとりママ)
たしかに。赤信号横断を、おまわりさんに見つかってしまった。
午前4時の赤信号、おまわりさんとしても、いちいち注意するのもホントは面倒くさいだろう。でも立場的に、黙っては見られない。
鬼も、見つけてしまった以上、キレイにはいられない。ちなみに鬼の言葉はヤクザ並みに怖い。だが、どこか大きく構えている。言葉でキレながら、そうは言わないけど、うまくやれ、遊び相手を間違えるな、と言ってるような、今日はいよいよと見逃してくれるやさしいおまわりさんみたいなところがある。自己解釈だが。
ごもっともだ。
世の女性に言いたい。口では厳しく注意しながらも、心の中ではいいので、どうか男の浮気を、大目に見てあげていただきたい。悪いことではあるけれど、「午前4時の赤信号」だと思って、それを、まるで凶悪犯罪みたいな扱いをしないでいてあげてほしい。
男だって、「悪いこと」とはわかっていますから。
もう二度としないと、心で反省してますから(またしちゃうんだけどね)。
「いいねえ、旅館は、上げ膳据え膳で、何もしなくていいでラクだわ」と。
その言葉を聞くたびに、僕はあの時の悪夢のような朝と、鬼の言葉を思い出す。
それは、僕が前夜浮気して帰ったのが鬼にバレ、叩き起こされながら完全に追い込まれた朝だった。
鬼は僕のケータイを手にして画面をこっちに見せながら、
「なんだよ、このメールはよ! 〝昨日はごちそうさまでした、甘く素敵な夜をありがとう〟。奥さんにバレないようにこっそり削除してね、って、何やってんだ、お前は!」
動揺しながら僕が答えた。
「合コンで盛り上がって、向こうがノリノリで……」
すると鬼はこうキレた。
「ふざけんな! 上げ膳据え膳、男の恥だかなんだか知らねえけどよ……」
「……」
絶句である。それを言うなら〝据え膳食わぬは男の恥〟だろ? と心でつっこみ、だがじっと我慢した。
そう、「上げ膳据え膳」にちょっと似ているけど使いどこを間違うと恥ずかしい「据え膳食わぬは男の恥」ということわざ。
女性のほうから誘っているのに男性がその女性の誘いに応じない、つまり抱かないのは男として恥である、という意味(別に前夜、僕がモテると言ってるのではない。男というものはこういう時に見栄を張るもので……)。
鬼はとっくに僕に問い詰める。
「お前は、なんでそんな浮気したいんだ?」
なぜ自分は浮気しちゃうのか、必死に答えを考える。〝ただの女好き〟。そう言うのは簡単だが、それでは鬼は納得しない。
まず、昨夜の浮気についてだが、僕の中では、そんなに悪いことをしたつもりはない。相手の女性には悪いが……いや悪くない、結婚してることも言ってあるんだから、合意の浮気。合法的浮気。でもそれは、鬼に対して筋が通らないのもわかる。何とかして納得させたい。
Q、なんで浮気するのか?
その時出た、僕の答えは……
「男の浮気ってのは、午前4時の赤信号みたいなもんなんだよ」
まだ暗い午前4時、新聞配達のバイクの音ぐらいしか聞こえない静かな時間。歩いていたら交差点の信号が赤だった。常識で言えば、立ち止まるのがルール。右を見ても左を見ても、クルマも、バイクも、自転車も、人も、そしてパトカーや警察官もいない。本来信号は、危険を回避するためのもの。しかるに今は100%安全だ。
赤信号で渡るのが悪いことだとはわかっている。しかし、この赤信号で立ち止まることは、大人として逆にアホなような気もする。
「……みたいな感じで、つい……」と、僕は説明した。
自分が結婚してることも子供がいることも相手に伝えてあって、それでもいいのなら的な流れでこうなってるのだから、ホントは赤信号だけど、安全だから、いいんじゃないか? と。悪いことかもしれないけど、夜中、人もクルマもいなかったら赤信号だけど渡るでしょ? ね? と同意を求めながら、必死で説明した。
「据え膳食わぬは男の恥って言うじゃない?」と加えるのは我慢して(笑)。
一瞬、納得した表情を見せたが、鬼は言った。
「あのさー、その女がどこの馬の骨だか知らねーけどよ、こうやってオレにメールで見つかってる時点で安全なのか? どうなんだよ、ああ!?」(鬼のセリフは実際のやりとりママ)
たしかに。赤信号横断を、おまわりさんに見つかってしまった。
午前4時の赤信号、おまわりさんとしても、いちいち注意するのもホントは面倒くさいだろう。でも立場的に、黙っては見られない。
鬼も、見つけてしまった以上、キレイにはいられない。ちなみに鬼の言葉はヤクザ並みに怖い。だが、どこか大きく構えている。言葉でキレながら、そうは言わないけど、うまくやれ、遊び相手を間違えるな、と言ってるような、今日はいよいよと見逃してくれるやさしいおまわりさんみたいなところがある。自己解釈だが。
ごもっともだ。
世の女性に言いたい。口では厳しく注意しながらも、心の中ではいいので、どうか男の浮気を、大目に見てあげていただきたい。悪いことではあるけれど、「午前4時の赤信号」だと思って、それを、まるで凶悪犯罪みたいな扱いをしないでいてあげてほしい。
男だって、「悪いこと」とはわかっていますから。
もう二度としないと、心で反省してますから(またしちゃうんだけどね)。