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探偵の知識

結婚とは、冷蔵庫の中にある材料で美味しい料理を作るようなもの

2025年11月19日

浮気とは「午前4時の赤信号」である。
すずきB

以前、僕は、タレントのヒロミさんが経営するスポーツジム「51.5」に通っていた。
当時のヒロミさんは、今ほどテレビに出ていない頃で、ジムにもよく顔を出しては、会員が楽しめる部活イベントを企画してくれた。
僕も登山イベントに参加した。みんなで語らいながら楽しく登山すると、山の頂上でヒロミさん自らラーメンを作り、これはね、うちのママ(伊代さん)が作ってくれたゆで卵だから」と照れながら我々にふるまってくれた。
今でこそおしどり夫婦として有名なヒロミさんだが、当時はその仲良しぶりがとても意外な印象で、昔からテレビ業界で接点のある僕に、
「お前、バラエティ班の⼈には、こういうの言うなよ、照れくせえじゃん」と言いながら、奥様との仲良しぶりを垣間見せてくれた(その後、僕が担当する番組に出てもらうようになったり、公私ともに⼤変お世話になっている)。

そんなヒロミさんの、夫婦円満の秘訣はとても参考になる。
伊代さんは、料理や片付けが苦手で、せっかちでキレイ好きなヒロミさんからしたら、妻としてイライラすることだらけ。しかしそこはあきらめ、美味しいものが食べたい時は「外食しよう」、掃除や片付けは「自分でやろう」、そう切り替えた。
一般的な位置づけなら、料理も片付けもできないダメな妻。しかしヒロミさんは、それ以外で伊代さんの良さを誰よりもわかっている。ある時期、ヒロミさんが芸能界から遠ざかり、毎日暇だった頃、伊代さんは、「今日はどこで遊ぶの?」と、まるでお母さんのような愛でやさしく見守った。いい加減、仕事しなよ」とは言わなかった。
ヒロミさんは、できない妻エピソードを面白いおかしく酒の席やテレビで語り、笑いをとる(ネタにする)ことで、マイナスをプラスに変えた。妻の欠点を、欠点として捉えたら欠点でしかない。しかし、面白いエピソードとして語ればそれは「笑い」という血や肉になり、絆を強める「結婚筋肉」となる。
本当のおしどり夫婦は、相性がいいだけではないと思う。結婚に必要な「結婚筋肉」を持っている2人。ヒロミさんのジムでもらったが、トップアスリートの優れた筋肉というものは実はやわらかい。だが、グッと力を入れた時に硬くなりパフォーマンスを発揮する。

それと同様、柔軟な「結婚筋肉」は、どんなマイナスもプラスにする、ポジティブ変換キーという、パフォーマンスを生んでくれる。
以前、結婚したい独身女性たちが集う、僕のトークイベントがあり、そこで、僕が話した、「こうしたら結婚できる」という説はこうだ。
「結婚ってのは、好きな人とすれば幸せってものではない、と思う。好きという気持ちほど、実は危ういものはない。ちなみに僕は、鬼と呼んでる嫁のこと、そんなに好きじゃないけど結婚したんです。どっさりにハマられた感じで、でも後悔はしていない。今、楽しいから。それほど好きでもなくても結婚できるし、幸せになれる」
「なぜ一緒にいるかといえば、お互いを〝必要〟と思ってるから。結婚に、グラグラ揺らぐ〝好き〟なんて感情は実はそんなに大事じゃなく、〝必要〟と思うことのほうが大事。なんなら、実際はそんなに必要じゃなくても、必要と思い込むテクさえあればいい。そう考えると、僕は今日、この会場に来ている30名ほどの女性と結婚しても、それなりに幸せに暮らせる自信があります」(会場、笑い)
そんな話をさせてもらいつつ、さらに補足した。
「結婚というのは、たとえるなら、家にある冷蔵庫の材料で作る料理だと思うんです。

思い描いたレシピ通りの料理、つまり理想の結婚を作ろうとすると、あれが足りないこれが足りない、ってなって、なかなか料理を作れなくなっちゃうでしょ? 料理下手に限って、レシピ通りあれこれ揃えようとして、揃わないと結局作らない。または、美味しくないのは材料が揃ってないから、なんて言い訳する。これ、なんとなくわかりますよね?」
「その状態が、今のみなさんが言うところの〝いい人がいない〟〝まだ独身〟の現状なんです。しかし、家庭の冷蔵庫に今入ってる材料で何を作ろうか、と考えるのが、幸せな結婚だと、僕は思うんです」
「昔、トシ・ヨロイヅカの鎧塚シェフが、もう焼き屋で打ち上げしたとき、アドリブで厨房に入って、たまたまあった豚レバーで美味しいスフレ(スイーツの一種)を作って、みんなを感動させたことがありました。優れた料理人って、今ある食材でなんでも作れるんです。僕の場合も、特別ラブラブでもないのに結婚してしまった相手。ただし、怖いし、抱かせてくれない(笑)。理想通りの材料が揃ってなくても、腕と工夫があれば、それなりに、まあまあ美味しい料理は作れる。キャベツの芯って意外と甘くて美味いじゃん、と、そういう部分に気づけることが結婚だと思うんです」
そんな風に、今ある選択肢を生かす考え方を、結婚に悩む女性に説いた。そこで、ある女性がこう言ってきた。「でも、結婚したい相手がいないし、見つからないんです」
「じゃあ、今、あなたの友達や知り合いで、あなたが2人でごはんに⾏ってもいいと思う独身男性をリストアップしてみて」「はい、3人、リストアップしました」
「その中の1人ずつとごはんに行ってみて。いいところのみを探してみて。3人とも、想像してみて」「はい、1人目は、真面目で……。2人目は美味しい店に詳しくて……。3人目は、ハゲだけど話が面白くて……」
そう、誰にもいいところがあるはずだ。
「じゃあ、その中の、誰と結婚したら、幸せになれそう?」
彼女は、顔を赤らめながら、幸せな結婚生活を想像していた。
今まで「相手がいない」と断言してた女性が、冷蔵庫の中にあった「キャベツの芯の甘さ」を理解した瞬間だ。あとはそれを料理することにとりかかるのみ。
「ぜひ、その3人と連絡とって、順番に、ごはん食べに行ってみて。この人と結婚できるかも、もし結婚するとしたら、と思いながら、いいところを探して褒めてみて。ほめほめゲーム(P204)っていうのを教えてあげるから……」
使い物にならないと思っていたキャベツの芯が素敵な材料に思える。それが結婚だ。